FIMを用いた当回復期リハビリテーション病院における退院先に影響を及ぼす因子についての検討

【はじめに】 回復期リハビリテーション病院(以下,回復期病院)の使命のひとつに,可能な限りの自宅復帰を推進することが挙げられている。実際に自宅など入院前居住地への退院を希望し,当院のような回復期病院に入院する者も多い。自宅復帰を目標として挙げた際,達成へ影響を及ぼす要因に関して,「移動形態」,「セルフケア能力」,「認知機能」など様々な報告がある。その中でも認知機能の低下が自宅復帰を阻害するという報告を散見する。しかし,認知機能の低下があっても自宅復帰を果たした者は数多くおり,認知機能の低下と併せて,別の要因も重なることにより,自宅復帰が妨げられているのではないかと考えられる。これまで,認知機能...

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Published in九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 Vol. 2011; p. 161
Main Authors 山田 学, 宮本 一樹, 堀口 喬, 岡本 伸弘, 増見 伸, 西村 亮, 兒玉 隆之
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 九州理学療法士・作業療法士合同学会 2011
Joint Congress of Physical Therapist and Occupational Therapist in Kyushu
Subjects
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ISSN0915-2032
2423-8899
DOI10.11496/kyushuptot.2011.0.161.0

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Summary:【はじめに】 回復期リハビリテーション病院(以下,回復期病院)の使命のひとつに,可能な限りの自宅復帰を推進することが挙げられている。実際に自宅など入院前居住地への退院を希望し,当院のような回復期病院に入院する者も多い。自宅復帰を目標として挙げた際,達成へ影響を及ぼす要因に関して,「移動形態」,「セルフケア能力」,「認知機能」など様々な報告がある。その中でも認知機能の低下が自宅復帰を阻害するという報告を散見する。しかし,認知機能の低下があっても自宅復帰を果たした者は数多くおり,認知機能の低下と併せて,別の要因も重なることにより,自宅復帰が妨げられているのではないかと考えられる。これまで,認知機能低下が,回復期病院入院期間中のADL自立度拡大および在宅復帰率に影響するという報告は散見するが,実際に自宅復帰へ影響を及ぼす要因について報告した研究は我々が探索したところ見当たらない。そこで我々は,入院時から経時的に行った評価FIMを用いて,認知機能の低下がある患者を対象に自宅復帰に影響する因子について検討した。【対象】 平成22年1月1日から平成22年6月30日の期間内に当院を退院した全患者352名の内,入院時に施行したMMSEが20点未満であった患者を対象とした。また,入院前居住地が施設であった患者,再発で急性期病院へ転院になった患者を除外した67名を対象とした。内訳は,自宅群が44名,施設群が23名であった。【方法】 対象を自宅群および施設群の2群に分け,退院時FIMの各項目得点を分散分析により検定を行い,多重比較検定にはTukey-Kramer法を用いた。また,自宅群と施設群のFIM得点に有意差を認めた項目に関して,自宅群と施設群を目的変数としたロジスティック回帰分析を行い,自宅復帰へ向けて重要となる因子の検証を行った。なお,統計処理にはSPSS 11.5J for Windowsを使用した。【結果】 (1). 自宅群は施設群に比べ,全ての「運動FIM」項目において有意に高かった。(2). 一方,全ての「認知FIM」項目では有意差を認めなかった。(3). ロジスティック回帰分析では,「階段」に有意なオッズ比が認められた。【考察】 「認知FIM」項目では有意差を認めず,「運動FIM」項目において自宅群は有意に高かった。さらに,ロジスティック回帰分析の結果から,退院先に影響を及ぼす重要な因子として,「階段」が示唆された。Hirschbergらは,「階段」について,効率的な筋出力や運動の協調性および制御機構が必要であることを報告している。また,FIM項目の中で,「階段」は高難易度項目であると報告されている。これらのことから,認知機能の低下がある者でも,日常的に階段昇降が遂行できる運動機能を満たしていることが,自宅退院を可能にする要因の一つになるのではないかと考えられた。
ISSN:0915-2032
2423-8899
DOI:10.11496/kyushuptot.2011.0.161.0