保存期慢性腎不全の食事療法
【目 的】 慢性腎不全患者の食事療法では、低たんぱく食が基本である。低たんぱく食の実施には低たんぱく米の利用が必須であるが、食味や経済的問題等から利用する患者は少ない。一方、近年易消化性たんぱく質であるグルテリン含有率が少ない米「LGC(Low Gluterin Content)ソフト」が開発、改良されており広島県でも生産されるようになった。このLGCソフトを腎不全患者の治療に使用するに先立ち、健常者に使用し種々の検討を行なったところ、LGCソフトは精白米に比べ1日たんぱく摂取量の減少傾向がみられた。また食味の評価も良好であった。そこで今回、保存期慢性腎不全患者の食事療法に使用し臨床効果を検...
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Published in | Nihon Nouson Igakukai Gakujyutu Soukai Syourokusyu Vol. 54; p. 119 |
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Main Authors | , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
2005
一般社団法人 日本農村医学会 |
Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 1880-1749 1880-1730 |
DOI | 10.14879/nnigss.54.0.119.0 |
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Summary: | 【目 的】 慢性腎不全患者の食事療法では、低たんぱく食が基本である。低たんぱく食の実施には低たんぱく米の利用が必須であるが、食味や経済的問題等から利用する患者は少ない。一方、近年易消化性たんぱく質であるグルテリン含有率が少ない米「LGC(Low Gluterin Content)ソフト」が開発、改良されており広島県でも生産されるようになった。このLGCソフトを腎不全患者の治療に使用するに先立ち、健常者に使用し種々の検討を行なったところ、LGCソフトは精白米に比べ1日たんぱく摂取量の減少傾向がみられた。また食味の評価も良好であった。そこで今回、保存期慢性腎不全患者の食事療法に使用し臨床効果を検討した。さらにLGCソフトに関してのアンケートを行ない種々の検討を加えた。【対 象】 対象は当院外来通院中の保存期慢性腎不全患者で、低たんぱく食事療法を継続している12名(男性8名、女性4名)である。平均年齢は65±15歳、BMIは22.6±2.1kg/m2、開始前の血清クレアチニン値は2.68±1.28mg/dl、原疾患は慢性糸球体腎炎10名、2型糖尿病による糖尿病性腎症1名、逆流腎症1名である。【方 法】 自宅で摂取する米をLGCソフトに変更し、副食は現行通りとした食事を5か月間喫食させた。1日たんぱく摂取量は24時間畜尿をMaroniらの式により、標準体重当り (g/kg/day)として算出した。腎機能障害の進行は1/クレアチニンの傾き(×10-4dl/mg/day)として表した。これらをLGCソフト使用前後で比較した。同時に3日間の食事記録調査、身体計測と血液検査を行なった。【結 果】1. 1日たんぱく摂取量の平均は前0.87±0.23、後0.85±0.17g/kg/dayで、有意差はなかった。2. 1/クレアチニンの傾きの平均は前-1.28±3.06、後-1.26±3.92×10-4dl/mg/dayで、有意差はなかった。3. LGCソフトのアンケートの結果では、食味に関しては「おいしい」が85%で、「おいしくない」が15%であった。長期間使用のコンプラアンスに関しては「可能」が69%、「どうにか可能」が15%、「不可能」が8%、「無回答」が8%であった。経済的な問題に関しては「気にならない」が92%で、「気になる」が8%であった。【考 察】 今回、摂取期間が5か月間と短期間であったため、LGCソフトの臨床効果に有意な差はみられなかった。アンケートの結果より、LGCソフトは、食味の評価は良好で、長期間摂取も容易であり、経済的な負担も軽減させることが可能であると考えられる。特に低たんぱく食事療法導入初期より患者に使用することで、患者のコンプライアンスを増すことが期待できると考えられる。今後当院においては継続して腎不全患者に積極的に使用し、長期的効果を検討していきたいと考えている。 |
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ISSN: | 1880-1749 1880-1730 |
DOI: | 10.14879/nnigss.54.0.119.0 |