当院A病棟における手術前患者のMRSAに対する知識調査

<緒言>近年、院内感染が社会的に問題となっており、当院でも、感染対策委員会やリンクナースの発足によりスタッフ間の感染意識の高まりが見られている。その中で、患者は院内感染についてどのように感じているのか疑問に思った。当院では現在、全身麻酔下での手術前に、看護師が患者の鼻腔のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(以下MRSAという)検査を行っているが、その時のマニュアル等はなく、患者への説明は統一されていない。実際検査を行っていても、患者から院内感染について聞かれることはほとんど無い。そこで今回、手術前患者のMRSAに対する知識の有無を知り、知識の差が患者背景と関係しているのか調査し、今後の患者感染教育の...

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Bibliographic Details
Published inNihon Nouson Igakukai Gakujyutu Soukai Syourokusyu Vol. 55; p. 344
Main Authors 渡辺 絹江, 小林 百合, 加納 一二三, 渡辺 静代, 矢島 広美
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE 2006
一般社団法人 日本農村医学会
Subjects
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ISSN1880-1749
1880-1730
DOI10.14879/nnigss.55.0.344.0

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Summary:<緒言>近年、院内感染が社会的に問題となっており、当院でも、感染対策委員会やリンクナースの発足によりスタッフ間の感染意識の高まりが見られている。その中で、患者は院内感染についてどのように感じているのか疑問に思った。当院では現在、全身麻酔下での手術前に、看護師が患者の鼻腔のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(以下MRSAという)検査を行っているが、その時のマニュアル等はなく、患者への説明は統一されていない。実際検査を行っていても、患者から院内感染について聞かれることはほとんど無い。そこで今回、手術前患者のMRSAに対する知識の有無を知り、知識の差が患者背景と関係しているのか調査し、今後の患者感染教育の手掛かりとすることができたのでここに報告する。<方法> 研究期間:平成17年10月1日から平成17年12月31日。 対象:全身麻酔下手術前の患者(緊急手術、意志疎通の困難な患者を除く)。 調査方法:独自に作成したアンケート用紙方式。入院時に渡し、手術前に回収。 調査内容:(1)性別、年齢。(2) MRSAという言葉を聞いたことの有無。(3) MRSAの意味を知っているか、知らないか。(4) 過去の手術目的入院の有無。(5) 自分、身内、知り合いの医療従事者の存在の有無。(6) 自分、身内、知り合いのMRSA罹患者の存在の有無。(7) MRSAの意味を知っている患者に対し、知っている項目に丸をつけてもらう。 分析方法:調査内容(1)から(7)を記述統計。 倫理的配慮について:無記名で記入してもらい、この研究以外では使用しないことに同意を得た患者にのみ協力を得た。<結果>対象患者30名(男性12名、女性18名)平均年齢58.3±14.4歳。MRSAを聞いたことのある患者の割合は40%、聞いたことのない患者は60%。MRSAの意味を知っている患者は26.7%、知らない患者は73.3%であった。男女とも、意味を知っている患者の割合は25%程度であり、性別に感染意識の差は見られなかった。過去に手術経験のある患者で、MRSAの意味を知っている患者の割合は57.1%、手術経験のない患者では17.4%であった。周りに医療従事者が存在すると答えた患者で、MRSAの意味を知っている患者は45.5%、医療従事者が存在しない患者では15.8%であった。身内にMRSAに罹患した人が存在した対象は1名であり、この項目では比較が行えなかった。年齢にも偏りがあり、比較が行えなかった。MRSAについて知っている項目(複数回答可)は、名称3、院内感染の原因8、感染しやすい人の特徴7、耐性を持つ1、感染経路3、予防法3であった。MRSAは、抵抗力の弱い入院患者にとっては難治化することが多く、入院の長期化を強いられることになる。入院してくる全患者家族にリスクを知ってもらい、自己防衛してもらうことで、院内感染の減少に繋がる。手術を行うA病棟においても重要なことであり、今後、術前のMRSA検査時には、患者の背景を把握し、手術が初めてという患者や、身内に医療従事者が存在しない患者には、特に統一した患者感染教育を行う必要がある。また、院内感染の原因となることは知っていても、予防法や、感染経路についての知識が低い傾向にあるため、指導していく必要がある。
ISSN:1880-1749
1880-1730
DOI:10.14879/nnigss.55.0.344.0