貯蓄と家族の経済学
伝統的な経済学の原理は1930年代以来,経済学における社会的,文化的価値観の役割を無視していた.ロビンズが最初に明示的に論じたように,経済学は価値判断に関わるべきではないのだ(Robbins (1935)).しかし,価値観は消費と貯蓄に関する態度や行動に影響を与え,貯蓄行動は経済に影響を与える.その無視の結果,経済学者は経済的現実について本質的な説明を与えることができないことがある.本論文の目的は,そのような場合,伝統的な経済学の慣行に文化的価値観の議論を組み込んだ慣行が,現実を説明するためには必要になると論証することである.とくに,本論文は,日本経済における過剰貯蓄の問題を,伝統的な利己的ラ...
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Published in | Journal of Behavioral Economics and Finance Vol. 3; p. 213 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
行動経済学会
2010
Association of Behavioral Economics and Finance |
Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 2185-3568 |
DOI | 10.11167/jbef.3.213 |
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Summary: | 伝統的な経済学の原理は1930年代以来,経済学における社会的,文化的価値観の役割を無視していた.ロビンズが最初に明示的に論じたように,経済学は価値判断に関わるべきではないのだ(Robbins (1935)).しかし,価値観は消費と貯蓄に関する態度や行動に影響を与え,貯蓄行動は経済に影響を与える.その無視の結果,経済学者は経済的現実について本質的な説明を与えることができないことがある.本論文の目的は,そのような場合,伝統的な経済学の慣行に文化的価値観の議論を組み込んだ慣行が,現実を説明するためには必要になると論証することである.とくに,本論文は,日本経済における過剰貯蓄の問題を,伝統的な利己的ライフサイクルモデルの拡張版であり,経済的には合理的でない文化的要因を持つ仮説を用いて経済学的観点と哲学的観点の両面から説明する.このあたらしい仮説によれば,過剰貯蓄は家族を中心とした日本特有の文化的,法的制度によって経済に対する制約がある場合に成り立つ別種の合理的な行動である. |
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ISSN: | 2185-3568 |
DOI: | 10.11167/jbef.3.213 |