重症者の在宅生活を見て

【はじめに】  当院は脳疾患専門の急性期病院である。急性期から回復期、訪問リハビリテーション(以下訪問リハ)、通所リハビリテーションと在宅復帰へ向け切れ目のない支援を行っている。今回訪問リハスタッフとして加わり訪問リハ利用者と家族との関わりを通して重症者の在宅復帰に関して若干の知見を得たので報告する。 【症例紹介】  70代女性、X年12月脳塞栓症発症し重度左片麻痺となる。約5ヶ月の入院を経てX+1年5月当院回復期リハビリテーション病棟を経由して在宅復帰した。ブルンストロームステージ左上肢、手指、下肢ともに2、日常生活活動(以下ADL)はバーテルインデックス0点で認知症の夫と主介護者である娘の...

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Published in九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 Vol. 2009; p. 213
Main Author 西小野 美和
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 九州理学療法士・作業療法士合同学会 2009
Joint Congress of Physical Therapist and Occupational Therapist in Kyushu
Subjects
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ISSN0915-2032
2423-8899
DOI10.11496/kyushuptot.2009.0.213.0

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Summary:【はじめに】  当院は脳疾患専門の急性期病院である。急性期から回復期、訪問リハビリテーション(以下訪問リハ)、通所リハビリテーションと在宅復帰へ向け切れ目のない支援を行っている。今回訪問リハスタッフとして加わり訪問リハ利用者と家族との関わりを通して重症者の在宅復帰に関して若干の知見を得たので報告する。 【症例紹介】  70代女性、X年12月脳塞栓症発症し重度左片麻痺となる。約5ヶ月の入院を経てX+1年5月当院回復期リハビリテーション病棟を経由して在宅復帰した。ブルンストロームステージ左上肢、手指、下肢ともに2、日常生活活動(以下ADL)はバーテルインデックス0点で認知症の夫と主介護者である娘の3人暮らし。 【介入の目的】  利用者のADL能力向上、福祉用具使用方法の確認と介護指導を目的に訪問リハ開始。 【介入と経過】  入院担当者が退院前訪問指導行いベッド固定式電動リフト、電動ギャッジアップベッド、リクライニング式車椅子を選定。福祉用具業者同席のもとリハビリテーション室でデモ機使用し主介護者へ繰り返しの指導と練習を行う。訪問リハ利用の依頼受け情報収集と同時に指導内容の統一を図るため練習に参加し福祉用具の操作方法を入院担当者と確認。食事、排泄は看護師が胃瘻の取り扱いとオムツ交換方法を指導。入浴はデイサービスで行うよう調整し退院。主介護者は積極的に指導を受けながらも在宅復帰への不安を抱えていた。翌日より訪問リハ開始、居住環境ではスペースが限られるため福祉用具が安全に使用できる配置となっているか使用状況を見て確認。用具使用のスペース、操作方法は獲得できていたが、安全面で移乗時の左下肢のポジショニングに再指導を必要とした。また屋外移動のため車椅子での動線を確保し手順を確認した。 【結果と考察】  介護者に負担なく安全な移乗動作を獲得したことで家族と利用者の希望である散歩に出掛けることができ、現在もショートステイを利用し介護負担の軽減を図りながら在宅生活を継続している。在宅復帰には家族の不安や負担が伴う。本利用者はADLの介助量が多く、夫も認知症で介助が必要であったため介護者の負担軽減と心理的な支援が重要であった。適切な福祉用具の選択と十分な練習ができたこと、入院担当者と訪問担当者が情報を共有し指導内容を統一できたこと、介護者の負担軽減を考慮したADLを獲得できたこと、入院から在宅への支援が切れ目なく調整できたことが介護不安軽減につながったと考える。
ISSN:0915-2032
2423-8899
DOI:10.11496/kyushuptot.2009.0.213.0