座圧分布測定器における動的座位バランス評価の信頼性の検討

【目的】脳卒中片麻痺患者では座位バランスの改善が高いほどADLの改善が高いとされている。また立位バランス・歩行能力の予後予測には静的より動的座位バランス評価の方が有用な情報であるとされる。動的座位バランスの定量的な評価は座位リーチテストに加え、近年座圧分布測定器で荷重量や座圧中心(COP)の移動距離を評価した報告がある。鍋谷らは座位側方リーチ距離とCOPの移動距離は必ずしも一致しないことを報告しており、リーチ距離だけでなくCOPの評価の必要性を唱えている。我々の報告でCOPの前額面上の移動距離はFIM運動項目に相関があることが示されているが、疾患の違いによる信頼性を検討した報告はない。本研究の...

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Published in九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 Vol. 2016; p. 255
Main Authors 光安 達仁, 出口 直樹, 山﨑 登志也, 金子 尊志, 平田 翔子, 白瀧 敦子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 九州理学療法士・作業療法士合同学会 2016
Joint Congress of Physical Therapist and Occupational Therapist in Kyushu
Subjects
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ISSN0915-2032
2423-8899
DOI10.11496/kyushuptot.2016.0_255

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Summary:【目的】脳卒中片麻痺患者では座位バランスの改善が高いほどADLの改善が高いとされている。また立位バランス・歩行能力の予後予測には静的より動的座位バランス評価の方が有用な情報であるとされる。動的座位バランスの定量的な評価は座位リーチテストに加え、近年座圧分布測定器で荷重量や座圧中心(COP)の移動距離を評価した報告がある。鍋谷らは座位側方リーチ距離とCOPの移動距離は必ずしも一致しないことを報告しており、リーチ距離だけでなくCOPの評価の必要性を唱えている。我々の報告でCOPの前額面上の移動距離はFIM運動項目に相関があることが示されているが、疾患の違いによる信頼性を検討した報告はない。本研究の目的は座圧分布測定器によるCOP移動距離の測定の信頼性を健常者および脳血管疾患患者で示し、定量的な動的座位バランス評価として有用であるか検討することである。【方法】対象は成人健常者群20名(男性10名、女性10名、年齢26.5±4.7歳)、当院一般病棟および回復期病棟に入院している端座位保持が自立した脳血管疾患患者群21名(男性9名、女性12名、年齢62.3±14.0歳、罹患期間96.0±67.7日)とした。内訳は片麻痺19名(下肢Br.stage Ⅱ:1名、Ⅲ:7名、Ⅳ:4名、Ⅴ:5名、Ⅵ:2名)、小脳梗塞2名であった。インフォームドコンセントを得るだけのコミュニケーションが困難な重度の失語症、高次脳機能障害の患者は対象から除外した。COPの計測はSRソフトビジョン数値版(フコク物産)を用いた。足が着かない高さの座面に深く座り、腕を組み左右にバランスを崩さない最大範囲で重心移動を実施。各方向の最大到達点から左右方向の幅を算出。体格の違いを考慮するため両大転子の幅で除し標準化し、左右の計測値とした。事前に十分な説明を行い、練習を1回、計測を3回実施。健常者群、患者群それぞれに対して検者内信頼性をICC(1,1),ICC(1,3)にて求め、ICC(1,k)を0.9以上とするために必要な測定回数kをk=0.9(1 ?ρ)/ρ(1 ? 0.9)の計算式にて検討した(ρはICC(1,1)で得られた信頼性係数値)。有意水準は5%とした。なお統計ソフトはSPSS 21.0を用いた。【結果】健常者における測定平均値は1回目0.71±0.08、2回目0.72±0.08、3回目0.72±0.08であった。脳血管疾患患者における測定平均値は1回目0.51±0.10、2回目0.51±0.11、3回目0.51±で0.09あった。健常者のICC(1,1)は0.946(95%信頼区間(CI):0.891-0.976)、ICC(1,3)は0.981(CI:0.961-0.992)、k=0.0051となり必要な測定回数は1回であった。患者のICC(1,1)は0.941(CI:0.884-0.974)、ICC(1,3)は0.980(CI:0.958-0.991)、k=0.0056となり必要な測定回数は1回であった。【考察】今回の結果から座圧分布測定器によるCOPの移動距離の測定は健常者だけでなく脳血管疾患患者においても非常に良好なICCを示し、1回の測定でも高い信頼性を得ることができる計測方法であることが示唆された。座圧分布測定器によるCOPの計測は上肢の麻痺の有無にかかわらず側方のバランスを連続尺度として評価できることから、臨床上有用な評価になりうる可能性がある。今回の研究の限界は検者内の信頼性のみを検討していることである。今後は検者間や測定日間の信頼性に加え測定標準誤差や最小検知変化を求め、臨床上有効な変化量がどの程度か検証する必要がある。その上でADLに関連する諸因子を考慮した上で座位バランスがADLにどの程度影響しているのかを検討する必要がある。【倫理的配慮,説明と同意】本研究は当院倫理委員会の承認を得た(承認番号:FRH2015-R-029)。対象者への説明は当院倫理規定に基づいた研究説明書、同意書を準備し、十分な説明を行い書面で同意を得た。また本研究による利益の発生は行われていない。
ISSN:0915-2032
2423-8899
DOI:10.11496/kyushuptot.2016.0_255