両側片麻痺により座位保持困難となった患者におけるウェルウォークの使用経験

【目的】 脳卒中治療ガイドライン2021において歩行補助ロボットが推奨されており、なかでもウェルウォークWW-1000(以下、WW)は、多数歩歩行が可能で歩行の運動学習を効率化し、重度片麻痺患者の歩行能力を改善する効果が報告されている。今回3度目の脳出血を発症し、座位保持困難な両側片麻痺患者に対して約10週間WWを行い、退院時の自宅内歩行が4点杖で自立可能となった症例を経験したため報告する。【症例紹介】 10年前に右被殻出血、3年前に左被殻出血の既往歴があり、今回左視床出血を発症した40代男性。第39病日に急性期病院から当院回復期リハ病棟へ入棟した。病前生活は軽度の注意障害はあるが、杖なし歩行...

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Published inKyushu physical therapist Congress Vol. 2023; p. 14
Main Authors 大渕 堅誠, 松永 敏江, 野口 大助, 濵崎 寛臣, 三宮 克彦, 徳永 誠
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会 2023
Kyushu Physical Therapy Association
Subjects
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ISSN2434-3889
DOI10.32298/kyushupt.2023.0_14

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Summary:【目的】 脳卒中治療ガイドライン2021において歩行補助ロボットが推奨されており、なかでもウェルウォークWW-1000(以下、WW)は、多数歩歩行が可能で歩行の運動学習を効率化し、重度片麻痺患者の歩行能力を改善する効果が報告されている。今回3度目の脳出血を発症し、座位保持困難な両側片麻痺患者に対して約10週間WWを行い、退院時の自宅内歩行が4点杖で自立可能となった症例を経験したため報告する。【症例紹介】 10年前に右被殻出血、3年前に左被殻出血の既往歴があり、今回左視床出血を発症した40代男性。第39病日に急性期病院から当院回復期リハ病棟へ入棟した。病前生活は軽度の注意障害はあるが、杖なし歩行で就労していた。 入院時の評価は下肢Brunnstrom recovery stage(R/L):Ⅳ/Ⅵ、右下肢Fugl-Meyer Assessment(以下、FMA):131/226点で運動失調を認めた。Stroke Impairment Assessment Set(以下、SIAS):右下肢触覚0点・位置覚0点、腹筋力0点・垂直性0点、Trunk Control Test(以下、TCT):24/100点、体幹筋は低緊張、頸部・体幹が直立保持できず座位・立位保持は困難であった。Functional Ambulation Categories(以下、FAC):0点、Berg Balance Scale(以下、BBS):2点。Functional Independence Measure(以下、FIM):運動項目16点、認知項目18点、合計34点で移動は車椅子介助。高次脳機能障害は軽度の注意障害を認めた。【経過】 入院当初から右下肢に長下肢装具を使用し後方介助で歩行を試みたが、体幹と麻痺側下肢のコントロールに難渋し歩行練習が困難であったため、WWを使用した歩行練習を試みた。開始時の免荷量は体重の20%、ロボット脚の膝伸展アシスト10、振り出しアシスト6の最大アシストとし、1日の歩行距離は40mであった。正面モニターに前額面動画を映し姿勢をフィードバック(以下、FB)した。実施期間は第55病日から第122病日の約10週間、頻度は40分/日、3回/週で実施した。 WW開始時は頸部体幹の姿勢保持、左立脚時の左側への重心移動、右遊脚期の振り出しが困難であり、WW上での歩行が困難であった。体重免荷と理学療法士が重心移動を介助することで、難易度を調整し歩行運動を成立させた。開始4週で左右の重心移動が軽介助で可能となり体重免荷を終了した。この時期の1週間の総距離は約300mであった。次にWW上で介助なし歩行ができることを目標とし、FBでの自己修正を学習課題とした。前額面のFB画面に垂直線を表示し、右立脚時の過度な骨盤の右側方移動と体幹左側屈を自己修正するよう教示した。その後、左側への重心移動がスムーズとなり、つま先離地困難の出現頻度が減少し、介助なしでWW歩行が可能となった。段階的にロボット脚のアシスト量を漸減し、WW終了時は膝伸展・振り出しアシストは4、歩行距離は300m/日、1週間の総距離は約860m可能となった。 終了時の評価は、下肢BRS(R/L):Ⅳ/Ⅵ、FMA:164/226点、SIAS:右下肢触覚1点・位置覚1点、腹筋力3点・垂直性3点、TCT:100点。BBS:40点、FAC:2点、FIM:運動項目70点・認知項目32点・合計102点、10m歩行時間は34.1秒(25歩)であった。平地歩行は右下肢に両側金属支柱付き短下肢装具を装着し、4点杖を使用した歩行が軽介助となった。第173病日に自宅退院となり、退院時の10m歩行時間は22.2秒(22歩)、自宅内移動手段は4点杖を使用し歩行自立可能となった。【考察】 座位保持困難な両側片麻痺患者に対して、適切な難易度調節と姿勢FBが可能なWWを用いて歩行練習を行った結果、バランス、歩行能力が改善した。WWは体幹機能が安定しない両側片麻痺患者の歩行能力を改善する一助になると考える。【倫理的配慮】 本症例に対して、目的と個人情報の取り扱いに十分に説明を行い書面にて同意を得た。
ISSN:2434-3889
DOI:10.32298/kyushupt.2023.0_14