Characteristics of cetacean fossils in the Miocene huge concretions and origin of concretions, Unosaki, Oga Peninsula, Akita Prefecture, Northeast Japan

男鹿半島鵜ノ崎海岸の波食台は中期中新世の泥岩層(西黒沢層~女川層)からなり,直径1mから数mの巨大な炭酸塩コンクリーションが多数分布する.その形態は球タイプと繭タイプに分類されるが,近年それらの中に大型の鯨類化石が発見され注目されている(渡部ほか,2017;長澤ほか,2018).最近の研究ではコンクリーションおよび鯨類化石はドロマイト質であり,それらの炭素は主に化石の鯨類由来と考えられている(隈ほか,2023).本地域において100個以上のコンクリーションを観察した結果,約30個に鯨類骨を確認し,記載可能な25個のコンクリーションについて,露出部の化石の観察によって形態や鯨類タクサ等について検...

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Published inAnnual Meeting of the Geological Society of Japan Vol. 2023; p. 242
Main Authors WATANABE, Akira, WATANABE, Hitoshi, KAWABE, Takayuki, NAGASAWA, Kazuo, SAWAKI, Hiroyuki
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published The Geological Society of Japan 2023
一般社団法人 日本地質学会
Subjects
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ISSN1348-3935
2187-6665
DOI10.14863/geosocabst.2023.0_242

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Summary:男鹿半島鵜ノ崎海岸の波食台は中期中新世の泥岩層(西黒沢層~女川層)からなり,直径1mから数mの巨大な炭酸塩コンクリーションが多数分布する.その形態は球タイプと繭タイプに分類されるが,近年それらの中に大型の鯨類化石が発見され注目されている(渡部ほか,2017;長澤ほか,2018).最近の研究ではコンクリーションおよび鯨類化石はドロマイト質であり,それらの炭素は主に化石の鯨類由来と考えられている(隈ほか,2023).本地域において100個以上のコンクリーションを観察した結果,約30個に鯨類骨を確認し,記載可能な25個のコンクリーションについて,露出部の化石の観察によって形態や鯨類タクサ等について検討したので報告する. コンクリーションの特徴は次のとおり.1)露頭の観察より16個が母岩に固着(現地性),9個が母岩より分離(異地性)と判断.2)現地性コンクリーションのうち,10個は西黒沢層に6個は女川層に含まれる.3)形態では繭タイプ9個,球タイプ4個,不明12個.4)全体の6割の15個が長径1m以上の大型コンクリーションで,最大のものは長径9mと巨大.5)全体の7割の18個で中心部周辺に化石を確認.6)ヒゲ鯨類の下顎骨や連続する椎骨が,コンクリーションの中軸部を貫通するものが12個(推定を含む)あり,繭タイプで目立つ.このように,化石とコンクリーションとの関連性が高いように見えるが,隣接するコンクリーションで化石がないものも多い.またコンクリーション内部に生痕化石が観察されることがある. 化石の特徴は次のとおり.1)形態と内部の海綿質の発達からすべて鯨類と同定.2)化石は骨格から分離した部位とその集合を主体とするが,複数の椎骨が連続する例や頭蓋・下顎が同層準で隣接する例があることから,軟部組織で連結された骨格もあったと推定.3)大半の化石に欠損・摩耗があるが,圧密による変形はほとんどない.4)産出部位と化石数は,肋骨30,椎骨15,ヒゲ鯨類下顎骨10,頭蓋(断片含む)5,上顎吻部4の計64点.5)化石は同一産出層準と形態の類似性に注目すると26個体程度にまとめられる.6)鯨類タクサではヒゲ鯨類が多く,部位形態よりセミクジラ科(下顎骨)5個体,ナガスクジラ科3個体(頭蓋,下顎骨)などを識別.7)形態の特異性から未知のタクサの可能性のある化石(下顎骨)も含む.8)化石部位を現生鯨類と比較すると,体長10m以上が15個体(最大16~22m)で,中期中新世鯨類では大きさが際立つ.  ところで,最近渡部ほか(2023)は,秋田県天徳寺層産の貝類化石コンクリーションの全炭素量に対して,貝類が供給しうる最大炭素量を検討した.その結果,貝類の軟体と殻を合わせた有機物起源の炭素量はコンクリーション全体の0.5~12%が上限であり,全炭素量のほぼ90%以上を他の未知の生物に依存している事実を明らかにした.隈ほか(2023)では,鵜ノ崎のコンクリーションの成因を基本的にはYoshida et al.(2015)のツノガイのモデルを鯨骨に置き換えたモデル(他の生物の関与も示唆)で想定しているが,膨大な炭素の大半を鯨類断片に求めることは渡部ほか(2023)を踏まえれば困難である.従ってその成因論についてはより慎重な議論が必要である.そのほか,隅ほか(2023)は西黒沢層と女川層にHCS(ハンモック状斜交層理)を認めたとして,HCSを要因とする鯨類の堆積過程や初生的なドロマイトの沈殿の説明を試みているが,これらも議論の余地が多い.そもそも,石油根源岩の深海性堆積層とされてきた女川層で,暴浪が海底に達するような浅海環境を想定することは,これまでの男鹿半島の地質研究からはあまりに乖離している. 文献 隈隆成ほか,2023,男鹿半島鵜ノ崎海岸の中新統西黒沢層・女川層中に見られる巨大鯨骨ドロマイトコンクリーション群の形成条件.地質雑,129,145-151.,長澤一雄ほか,2018,秋田県男鹿半島鵜ノ崎海岸の中新統コンクリーションより多数の鯨類化石を発見.古生物学会2018年年会予稿集,21.,渡部晟ほか,2017,秋田県男鹿半島鵜ノ崎の中・上部中新統(西黒沢層・女川層)に含まれる炭酸塩コンクリーション中の脊椎動物化石の産状.秋田県博研報,42,6-17.,渡部晟ほか,2023,秋田県大仙市天徳寺層(後期中新世後期-鮮新世)産球状炭酸塩コンクリーションの炭素の起源と形成過程.秋田県博研報,48,11-26.,Yoshida,H.et al.,2015,Ealy post-mortem formation of carbonate concretions around tusk-shells over week-month timescales.Sci.Rep. 5,1-7
Bibliography:G1-O-5
ISSN:1348-3935
2187-6665
DOI:10.14863/geosocabst.2023.0_242