(entry) The secondary remanent magnetization yielded by exothermic events in a fossil seismic fault zone within an exhumed accretionary complex

● はじめに プレート沈み込み境界断層で発生する地震は、多様なすべり速度とすべり継続時間で特徴付けられ、沈み込み帯浅部の領域は海溝軸から深部に向かって、非地震性領域、浅部スロー地震発生帯、通常・巨大地震発生帯へと遷移することが観測研究で明らかになっている [1]。これら多様なすべりのメカニズムを理解するには、観測されている現象を物質科学的に明らかにすることが重要である。地震性すべり時に断層面で発生する摩擦発熱は、断層岩中に効率的に保存されるため [2]、地震メカニズムを理解する研究に広く利用されてきた [3] [4]。磁性鉱物は、発熱イベント時に起きた破壊や変形を保存できるという他にない利点を...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published inAnnual Meeting of the Geological Society of Japan p. 182
Main Authors Uchida, Taizo, Hashimoto, Yoshitaka, Yamamoto, Yhuji, Hatakeyama, Tadahiro
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published The Geological Society of Japan 2023
Subjects
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:● はじめに プレート沈み込み境界断層で発生する地震は、多様なすべり速度とすべり継続時間で特徴付けられ、沈み込み帯浅部の領域は海溝軸から深部に向かって、非地震性領域、浅部スロー地震発生帯、通常・巨大地震発生帯へと遷移することが観測研究で明らかになっている [1]。これら多様なすべりのメカニズムを理解するには、観測されている現象を物質科学的に明らかにすることが重要である。地震性すべり時に断層面で発生する摩擦発熱は、断層岩中に効率的に保存されるため [2]、地震メカニズムを理解する研究に広く利用されてきた [3] [4]。磁性鉱物は、発熱イベント時に起きた破壊や変形を保存できるという他にない利点を持っており、変形機構の異なる多様なすべりを理解するために古地磁気・岩石磁気研究は有効である。本研究では、陸上付加体に発達する、断層岩に記録された発熱の証拠を明らかにすることを目的として、断層岩と母岩の試料に対し、磁性鉱物の同定と残留磁化測定を行った。● 地質概説・試料 白亜系四万十帯は、プレート沈み込み帯における堆積物の剥ぎ取り付加 [5]から底付け付加 [6]、序列外断層の形成 [7]に至るまでの付加過程が保存された陸上付加体である。調査地域には、南部に横波メランジュ [8]、北部に新庄川層群須崎層が分布している。これの岩相は、メランジュを母岩とするNE–SW走向、N傾斜の断層(五色ノ浜断層 [8])によって切られており、その断層帯(幅数 m)には、明瞭な剪断面を持つ厚さ約20 cmのカタクレーサイトが発達している。メランジュと須崎層の過去の最高被熱温度はビトリナイト反射率から約200〜250 ℃と求められている [9] [10]。試料はカタクレーサイト、母岩、整然相から採取した。● 結果(磁性鉱物の同定・残留磁化測定)岩石磁気実験の結果、各岩相に含まれる主要な強磁性鉱物は、カタクレーサイトは主にマグネタイトと単斜ピロータイト、その他の岩相は主にマグネタイトであることが明らかになった。電子顕微鏡観察から、カタクレーサイトのマグネタイトは、主にパイライトの分解によって生成したことが明らかになった。残留磁化測定の結果、カタクレーサイト以外の4つの岩相で、特徴磁化成分と現在の磁北を指す粘性残留磁化の2つの磁化成分が分離された。カタクレーサイトのほとんどの試料は特徴磁化成分を得られなかったが、熱消磁と交流消磁でそれぞれ300〜360 ℃または15〜20 mTでアンブロックする、特有な二次磁化(NW偏角で低伏角)と、現在の磁北を指す粘性残留磁化の2つ以上の磁化成分が分離された。● 議論 カタクレーサイトは、他の岩相にはない古地磁気・岩石磁気的特徴があることが明らかになった。このことから、残留磁化測定の結果はカタクレーサイトのみ何らかのイベントが起きたことを示す。カタクレーサイトに特有の二次磁化は、マグネタイトとピロータイトが担っていると考えられる。この磁化成分のアンブロッキング温度(300〜360 ℃)は、ピロータイトのキュリー温度(約320 ℃)付近であるが、マグネタイトのキュリー温度(約580 ℃)よりは低く、母岩の最高被熱温度よりも高い。このことから、この二次磁化はカタクレーサイト内で起きた熱イベントに関連して獲得された、熱粘性残留磁化もしくは熱残留磁化であると推定した。●引用文献 [1] Obara, K. and Kato, A., 2016, Science, 353(6296), 253-257; [2] Scholz, C. H., 2002, Cambridge: Cambridge University Press; [3] Fulton, P. M., and Harris, R. N., 2012, Earth Planet. Sci. Lett., 335, 206-215; [4] Rice, J. R., 2006, J. Geophys.,111, B05311; [5] Ujiie, K, 1997, Tectonics, 16, 305-321; [6] Hashimoto, Y. and Kimura, G., 1999, Tectonics, 18, 92-107; [7] Underwood, M. B., Laughland, M.M. and Kang, S.M., 1993, Geol. Soc. Amer. Spec., 273, 45-61; [8] Hashimoto, Y. et al., 2012, Island Arc, 21(1), 53-64; [9] Ohmori, K., Taira, A., Tokuyama, H., Sakaguchi, A., Okamura, M. and Aihara, A., 1997, Geology, 25, 327-330. [10] Sakaguchi, A., 1999, Earth and Planet. Sci. Lett., 173, 61-74.
Bibliography:T13-O-2
ISSN:1348-3935
2187-6665
DOI:10.14863/geosocabst.2023.0_182