パンピングマニピュレーション直後から非可逆的な咬合変化を生じたクローズドロック症例

パンピングマニピュレーションはクローズドロックに対して有効な治療法であるだけでなく, 合併症の少ない安全な治療法である。本論文は, 11か月前に他病院でパンピングマニピュレーションとヒアルロン酸ナトリウムの関節注入を受けた後に, 進行性の非可逆的な咬合変化を生じたまれな症例について報告した。55歳女性が右側顎関節の疼痛と咀嚼障害があり, 紹介来院した。有痛性の開口障害 (34mm), 右側の顎関節と咬筋に圧痛および右側第二大臼歯以外は開咬状態であった。右側顎関節のMRIでは, 骨変化を伴う復位不能な関節円板前方転位, 下顎頭の下方への偏位およびT2強調像で肥厚した円板後部組織が高信号を呈した。...

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Published in日本顎関節学会雑誌 Vol. 14; no. 2; pp. 205 - 209
Main Authors 千葉, 雅俊, 福井, 功政, 越後, 成志, 友寄, 泰樹, 千葉, 和彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本顎関節学会 20.08.2002
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Summary:パンピングマニピュレーションはクローズドロックに対して有効な治療法であるだけでなく, 合併症の少ない安全な治療法である。本論文は, 11か月前に他病院でパンピングマニピュレーションとヒアルロン酸ナトリウムの関節注入を受けた後に, 進行性の非可逆的な咬合変化を生じたまれな症例について報告した。55歳女性が右側顎関節の疼痛と咀嚼障害があり, 紹介来院した。有痛性の開口障害 (34mm), 右側の顎関節と咬筋に圧痛および右側第二大臼歯以外は開咬状態であった。右側顎関節のMRIでは, 骨変化を伴う復位不能な関節円板前方転位, 下顎頭の下方への偏位およびT2強調像で肥厚した円板後部組織が高信号を呈した。本病変は, 右側顎関節の変形性関節症と円板後部組織炎による開咬と診断した。円板後部組織にステロイドの注射を行い, その後スプリント療法と薬物療法を施行した。疼痛と開口量は改善したが, 開咬と咀嚼障害は変わらなかったので補綴的に咬合を再構成した。症状の再燃もなく, 治療後の経過は良好であった。治療後のMRIとMPR-CTで, 関節窩側からの骨形成によって下顎頭の位置は相対的に改善し, 円板後部組織炎は消退していた。
ISSN:0915-3004
1884-4308
DOI:10.11246/gakukansetsu1989.14.205