非破壊放射化分析法による慢性腎不全患者組織中微量元素の測定

1.非透析,透析慢性腎不全患者の大動脈,皮膚,毛髪,爪のCa,Mg含量およびAlなどの微量元素含量を測定した。測定は大型原子炉を用いた非破壊放射化分析法によった。 2.人動脈組織では,非透析,透析を含めた腎不全群のAl,Mg含量は,対照に比し有意に高値を示した。Ca含量はその平均値において腎不全群が高かったが,統計学的な有意差はなかった。 3.皮膚組織では,非透析群のMg含量が対照群に比し有意に低かったが,この意味は明らかにしえなかった。非透析群,透析群とも,Ca含量の平均値は対照群より25%高値を示したが,統計学的に有意とは言えなかった。 4.毛髪中では,非透析群,透析群とも有意のCaおよび...

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Published in日本腎臓学会誌 Vol. 28; no. 2; pp. 197 - 202
Main Authors 塚本, 雄介, 岩波, 茂, 中村, 瑞穂, 丸茂, 文昭, 佐藤, 直之
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本腎臓学会 01.02.1986
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ISSN0385-2385
1884-0728
DOI10.14842/jpnjnephrol1959.28.197

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Summary:1.非透析,透析慢性腎不全患者の大動脈,皮膚,毛髪,爪のCa,Mg含量およびAlなどの微量元素含量を測定した。測定は大型原子炉を用いた非破壊放射化分析法によった。 2.人動脈組織では,非透析,透析を含めた腎不全群のAl,Mg含量は,対照に比し有意に高値を示した。Ca含量はその平均値において腎不全群が高かったが,統計学的な有意差はなかった。 3.皮膚組織では,非透析群のMg含量が対照群に比し有意に低かったが,この意味は明らかにしえなかった。非透析群,透析群とも,Ca含量の平均値は対照群より25%高値を示したが,統計学的に有意とは言えなかった。 4.毛髪中では,非透析群,透析群とも有意のCaおよびAl含量の高値をみている。また非透析群でZnの有意の減少,透析群でVの有意の増加をみた。 5.爪組織では,非透析群で,As,Mn,Cuの有意の増加をみた。6.Alは大動脈,毛髪で増加を示し,脳,骨のみでなく,他臓器でも蓄積していることを示唆した。Caは,丘髪で有意の増加を示し大動脈,皮膚でも増加を示唆する成績であり,二次性副甲状腺機能亢進症のため組織中Ca沈着が起きていると考えられた。 7.毛髪が最も腎不全による病態をよく反映していると考えられ,腎不全患者の微量元素異常を非侵襲的に知るための最もよい材料と思われた。
ISSN:0385-2385
1884-0728
DOI:10.14842/jpnjnephrol1959.28.197