歯胚の生化学的研究 特にNon-collagenous Proteinの変動について

歯の形成およびその発育過程における研究は, 小児歯科領域ばかりでなく歯科全域にわたって重要な課題である。そこで歯胚形成から萠出までの一連の過程, 特に歯小嚢および歯髄における基質成分が, 如何なる物質構成を有するのか, またその生理的機能を化学構造の面から明らかにするための基本情報として, これらの組織のコラーゲンおよび非コラーゲン成分について検討した。すなわちウシ永久歯歯胚を実験材料とし, 歯冠のみ形成されたものをstage I, 歯根がほぼ1/2形成された状態のものをstage II, 更に歯根が殆んど完成された状態のものをstage IIIに分類し, 歯小嚢および歯乳頭の各stageにお...

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Published in歯科基礎医学会雑誌 Vol. 25; no. 1; pp. 329 - 340
Main Author 桜井, 隆夫
Format Journal Article
LanguageEnglish
Japanese
Published 歯科基礎医学会 20.03.1983
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ISSN0385-0137
DOI10.2330/joralbiosci1965.25.329

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Summary:歯の形成およびその発育過程における研究は, 小児歯科領域ばかりでなく歯科全域にわたって重要な課題である。そこで歯胚形成から萠出までの一連の過程, 特に歯小嚢および歯髄における基質成分が, 如何なる物質構成を有するのか, またその生理的機能を化学構造の面から明らかにするための基本情報として, これらの組織のコラーゲンおよび非コラーゲン成分について検討した。すなわちウシ永久歯歯胚を実験材料とし, 歯冠のみ形成されたものをstage I, 歯根がほぼ1/2形成された状態のものをstage II, 更に歯根が殆んど完成された状態のものをstage IIIに分類し, 歯小嚢および歯乳頭の各stageにおける組成変化の分析を行った。その結果,0.16MNaCl可溶性硫安分画のDEAE cellulose chromatographyによる分子分布は, 歯小嚢では極めてhomologousな分子が広い範囲に分布し, 歯胚形成に伴って顕著な変化はみられないが, 歯乳頭では反対に, heterologousな分子より構成され,歯胚形成に伴いpeak2は減少し, peak3が明らかに増加した。酢酸不溶性分画において, コラーゲンの占める割合は, 歯小嚢でstage I:72%, II:82%, III:93%であり, 一方歯乳頭ではstage I:78%, II; 82%, III:96%といずれも増加した。さらに非コラーゲン成分の占める割合は, 歯小嚢ではstage I:28%, II:18%, III:7%, 歯乳頭ではstage I:22%, II:18%, II:4%であり, 明きらかに減少した。しかも非コラーゲン成分のうち酸性アミノ酸と塩基性アミノ酸が, 歯小嚢および歯乳頭において各stageの経過と共に顕著なる減少傾向を示したことは, non-collagenous proteinでの極性部分が歯胚の成長, 発育に重要な意義を持つものと思われる。
ISSN:0385-0137
DOI:10.2330/joralbiosci1965.25.329