水中における蛍光プローブ/シクロデキストリン複合体センサーの超分子機能

本論文では, 水中でのイオン及び分子の認識を可能とする蛍光プローブ/シクロデキストリン (CyD) 複合体センサーの超分子機能をまとめた. 水中でのアルカリ金属イオン認識を実現するために, ピレン蛍光団とベンゾ-15-クラウン-5部位を異なる長さのアルキル鎖で連結した蛍光プローブCn-15C5 (n=1, 3, 5) を用い, γ-CyD存在下でのアルカリ金属イオンに対する応答挙動を調べた. C3-15C5は, 有機溶媒中ではB15C5部位との1 : 1の相互作用に基づいてNa+選択性を示す. しかし水中では, C3-15C5/γ-CyD複合体はK+イオンに対して選択的に応答し, ピレンダイマ...

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Published in分析化学 Vol. 50; no. 6; pp. 355 - 368
Main Authors 早下, 隆士, 山内, 晶世, 加藤, 彩子, 童, 愛軍, 寺前, 紀夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本分析化学会 05.06.2001
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Summary:本論文では, 水中でのイオン及び分子の認識を可能とする蛍光プローブ/シクロデキストリン (CyD) 複合体センサーの超分子機能をまとめた. 水中でのアルカリ金属イオン認識を実現するために, ピレン蛍光団とベンゾ-15-クラウン-5部位を異なる長さのアルキル鎖で連結した蛍光プローブCn-15C5 (n=1, 3, 5) を用い, γ-CyD存在下でのアルカリ金属イオンに対する応答挙動を調べた. C3-15C5は, 有機溶媒中ではB15C5部位との1 : 1の相互作用に基づいてNa+選択性を示す. しかし水中では, C3-15C5/γ-CyD複合体はK+イオンに対して選択的に応答し, ピレンダイマー蛍光を示すことが分かった. γ-CyD包接錯体の水中での平衡解析から, このダイマー蛍光は, C3-15C5とK+, γ-CyDの2 : 1 : 1錯体形成に基づくことを明らかにした. 一方, スペーサー長の長いC5-15C5/γ-CyD複合体では, 応答感度が減少し, スペーサー長を短くしたC1-15C5/γ-CyD複合体では, アルカリ金属イオンに対する蛍光応答は全く見られなかった. このように応答機能は, プローブのアルキルスペーサー長に強く依存し, C3-15C5/γ-CyD複合体が, 水中で最も優れたK+選択性を示すことを明らかにした. ボロン酸型プローブC4-PB/β-CyD複合体は, 水中で糖と結合して発蛍光性を示す. C4-PBには酸解離平衡が存在するが, 酸解離に伴い, C4-PB/β-CyD複合体の蛍光強度も増大した. この見掛けの酸解離定数は, フルクトース添加により低pH側にシフトし, その結果中性条件下で, 発蛍光型の糖認識が可能となることが分かった. 応答挙動の解析から, 糖との結合によりC4-PBの酸解離が促進され, ピレン蛍光団から酸型のフェニルボロン酸部位へのPETに基づく消光が解消されることによる新しい応答機構であることを明らかにした.
ISSN:0525-1931
DOI:10.2116/bunsekikagaku.50.355