心不全を初発症状とした巨大動脈瘤を合併した腎動静脈瘻の1手術例

患者は60才,女性. 20年来持続していた労作時呼吸困難が, 1983年5月頃に増強し,全身倦怠感,下腿浮腫が出現,利尿薬にて軽快.同年9月頃より再び心不全症状が増悪し,起坐呼吸,全身浮腫の状態となつたため,某医に入院し,ジギタリス,利尿薬で軽快した.右側腹部に連続性雑音を伴う拍動性の巨大な腫瘤が触知され,巨大動脈瘤を伴う右腎動静脈瘻の疑いで,当科に入院した.軽度の腎機能障害がみられたが,レニン活性は正常であつた.心臓カテーテル検査では,高心拍出量で,下大静脈の腎静脈流出部の上下で酸素含量較差がみられ,同部での短絡率は37.9%と高値であつた.右腎動脈造影により,巨大な2個の動脈瘤を伴う腎動脈...

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Published in日本内科学会雑誌 Vol. 74; no. 10; pp. 1436 - 1441
Main Authors 山崎, 英文, 青井, 渉, 阿部, 仁, 土井, 豊, 鈴木, 伸, 橋場, 邦武, 金武, 洋, 斎藤, 泰, 関根, 一郎, 西森, 一正
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本内科学会 10.10.1985
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Summary:患者は60才,女性. 20年来持続していた労作時呼吸困難が, 1983年5月頃に増強し,全身倦怠感,下腿浮腫が出現,利尿薬にて軽快.同年9月頃より再び心不全症状が増悪し,起坐呼吸,全身浮腫の状態となつたため,某医に入院し,ジギタリス,利尿薬で軽快した.右側腹部に連続性雑音を伴う拍動性の巨大な腫瘤が触知され,巨大動脈瘤を伴う右腎動静脈瘻の疑いで,当科に入院した.軽度の腎機能障害がみられたが,レニン活性は正常であつた.心臓カテーテル検査では,高心拍出量で,下大静脈の腎静脈流出部の上下で酸素含量較差がみられ,同部での短絡率は37.9%と高値であつた.右腎動脈造影により,巨大な2個の動脈瘤を伴う腎動脈瘻が確認された.本症が心不全の原因と考えられ,動脈瘤破裂の可能性があるために右腎摘出術を施行した.摘出腎の病理組織診断はvascular malformationで,本症が先天性のものであることが示唆された.
ISSN:0021-5384
1883-2083
DOI:10.2169/naika.74.1436