門脈圧亢進が原因と考えられた上腸間膜静脈血栓症の1例

肝硬変にて加療中の患者に発生した上腸間膜静脈血栓症を経験したので報告する.患者は3日前からの腹痛を主訴に来院した.腹痛は次第に増強し腹膜刺激症状が出現, CT検査にて門脈内血栓,腸間膜の著明な浮腫を認め上腸間膜静脈血栓症の診断にて開腹術を行った.明らかに鬱血性壊死をおこした小腸のみを切除して閉腹した.全身状態を整え2日後に再開腹し,壊死の疑わしい部分を追加切除した後に吻合を行った.術後はワーファリンによる抗凝固療法を行い,現在まで1年10カ月間再発は認められていない. 本症例は食道静脈瘤を合併しており,門脈圧亢進が原因となり上腸間膜静脈血栓症をおこしたと考えられた.一般に肝硬変患者には凝固障害...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 61; no. 12; pp. 3378 - 3381
Main Authors 高山, 悟, 島村, 善行, 藤田, 省吾, 加賀谷, 正, 向後, 正幸
Format Journal Article
LanguageEnglish
Japanese
Published 日本臨床外科学会 25.12.2000
Subjects
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.61.3378

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Summary:肝硬変にて加療中の患者に発生した上腸間膜静脈血栓症を経験したので報告する.患者は3日前からの腹痛を主訴に来院した.腹痛は次第に増強し腹膜刺激症状が出現, CT検査にて門脈内血栓,腸間膜の著明な浮腫を認め上腸間膜静脈血栓症の診断にて開腹術を行った.明らかに鬱血性壊死をおこした小腸のみを切除して閉腹した.全身状態を整え2日後に再開腹し,壊死の疑わしい部分を追加切除した後に吻合を行った.術後はワーファリンによる抗凝固療法を行い,現在まで1年10カ月間再発は認められていない. 本症例は食道静脈瘤を合併しており,門脈圧亢進が原因となり上腸間膜静脈血栓症をおこしたと考えられた.一般に肝硬変患者には凝固障害のため血栓症はおこりにくいと思われがちであるが,門脈圧亢進状態は上腸間膜静脈血栓症の一因となることに留意すべきである.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.61.3378