中枢性嗅覚障害の臨床的検討 脳腫瘍症例を中心に

中枢性嗅覚障害で病変の局在がはっきりしている脳腫瘍10例を対象に臨床的検討を行った。自覚的に「正常」と答えた7例中, 実際に検査上正常だった症例はなかった。認知嗅力損失で左右差のあった症例が8例あり, 単鼻孔嗅検査は不可欠と考えられた。検知/認知の差が2.0以上あった解離現象を示した症例が5例あった。解離現象は第3次嗅覚中枢の障害の他に嗅覚の伝達情報量が不足した場合でも起こりうると考えられた。静脈性嗅覚検査では潜伏時間は正常で持続時間が短縮していることが特徴的であったが, この現象は病変の局在を反映するものではなかった。病変と同側性あるいは両側性に嗅覚障害が発症した例が多かったが, 必ずしも当...

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Published in耳鼻咽喉科展望 Vol. 36; no. 6; pp. 709 - 716
Main Authors 作本, 真, 古川, 仭, 木村, 恭之, 土定, 建夫, 三輪, 高喜, 塚谷, 才明
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 耳鼻咽喉科展望会 15.12.1993
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ISSN0386-9687
1883-6429
DOI10.11453/orltokyo1958.36.709

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Summary:中枢性嗅覚障害で病変の局在がはっきりしている脳腫瘍10例を対象に臨床的検討を行った。自覚的に「正常」と答えた7例中, 実際に検査上正常だった症例はなかった。認知嗅力損失で左右差のあった症例が8例あり, 単鼻孔嗅検査は不可欠と考えられた。検知/認知の差が2.0以上あった解離現象を示した症例が5例あった。解離現象は第3次嗅覚中枢の障害の他に嗅覚の伝達情報量が不足した場合でも起こりうると考えられた。静脈性嗅覚検査では潜伏時間は正常で持続時間が短縮していることが特徴的であったが, この現象は病変の局在を反映するものではなかった。病変と同側性あるいは両側性に嗅覚障害が発症した例が多かったが, 必ずしも当てはまらない症例もみられた。これは頭蓋内は圧迫が他の部分に影響しやすく, 周囲には浮腫性病変も合併しやすいことと関連があると考えられた。
ISSN:0386-9687
1883-6429
DOI:10.11453/orltokyo1958.36.709