虚血性小腸狭窄の臨床的および病理組織学的研究

特発性の虚血性小腸狭窄は極めて稀な疾患概念であり,我国では最近20年間で筆者らの症例を含めて3例の報告をみるに過ぎない.北里大学病院で経験した虚血性小腸狭窄の3手術例を臨床的および病理組織学的に検討した.臨床経過では発症から,慢性狭窄期への進展が速やかな点が特徴であつた. X線学的および病理組織学的特徴は,虚血性大腸炎の狭窄型と近似していたが,小腸病変では, (1)全周性潰瘍で線状潰瘍は少ない. (2)潰瘍辺縁の再生上皮に乏しく,瘢痕形成が稀である,などの相異点を認めた.この相異は循環障害の程度や組織反応の差によると思われ,本病変も虚血性大腸炎と同様に腸循環障害に基づく組織変化と考えられた....

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Published in日本内科学会雑誌 Vol. 74; no. 12; pp. 1658 - 1671
Main Authors 勝又, 伴栄, 岡部, 治弥, 中, 英男
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本内科学会 10.12.1985
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Summary:特発性の虚血性小腸狭窄は極めて稀な疾患概念であり,我国では最近20年間で筆者らの症例を含めて3例の報告をみるに過ぎない.北里大学病院で経験した虚血性小腸狭窄の3手術例を臨床的および病理組織学的に検討した.臨床経過では発症から,慢性狭窄期への進展が速やかな点が特徴であつた. X線学的および病理組織学的特徴は,虚血性大腸炎の狭窄型と近似していたが,小腸病変では, (1)全周性潰瘍で線状潰瘍は少ない. (2)潰瘍辺縁の再生上皮に乏しく,瘢痕形成が稀である,などの相異点を認めた.この相異は循環障害の程度や組織反応の差によると思われ,本病変も虚血性大腸炎と同様に腸循環障害に基づく組織変化と考えられた.
ISSN:0021-5384
1883-2083
DOI:10.2169/naika.74.1658