眼窩, 頭蓋底への転移を認めた肝細胞癌の3例と骨転移剖検例の検討

肝細胞癌の眼窩, 頭蓋底への骨転移により, 眼球突出, 眼球運動障害, 視覚障害をきたした稀な3例を報告する. 全例C型肝硬変を背景としていた. 2例は肝細胞癌初発時期から4~5年間で度重なる治療経過を経て転移巣が出現した. 一方, 残る1例は転移巣による症状を契機に肝細胞癌が診断された初発例であった. いずれの症例も肺に明らかな転移巣を認めず, 肝原発巣から椎骨静脈叢を介した血行性転移が主たる要因と推測された. 1例で眼窩転移巣摘出術が施行され, 一時的な症状改善がみられたが, 術後3カ月で急速な再発をみた. なお2例で転移巣に対する放射線療法が施行されたが, 疼痛緩和がみられたものの, 腫...

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Published in肝臓 Vol. 38; no. 11; pp. 660 - 667
Main Authors 長谷川, 聡, 青柳, 豊, 藤巻, 亮子, 朝倉, 均, 滝川, 真吾, 三浦, 充邦, 市田, 隆文, 和栗, 暢生
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本肝臓学会 25.11.1997
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ISSN0451-4203
1881-3593
DOI10.2957/kanzo.38.660

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Summary:肝細胞癌の眼窩, 頭蓋底への骨転移により, 眼球突出, 眼球運動障害, 視覚障害をきたした稀な3例を報告する. 全例C型肝硬変を背景としていた. 2例は肝細胞癌初発時期から4~5年間で度重なる治療経過を経て転移巣が出現した. 一方, 残る1例は転移巣による症状を契機に肝細胞癌が診断された初発例であった. いずれの症例も肺に明らかな転移巣を認めず, 肝原発巣から椎骨静脈叢を介した血行性転移が主たる要因と推測された. 1例で眼窩転移巣摘出術が施行され, 一時的な症状改善がみられたが, 術後3カ月で急速な再発をみた. なお2例で転移巣に対する放射線療法が施行されたが, 疼痛緩和がみられたものの, 腫瘍縮小効果はみられなかった. 今後は原発巣治療の完全性の追求に加え, 遠隔転移巣への新たな治療戦略が必要と考えられた.
ISSN:0451-4203
1881-3593
DOI:10.2957/kanzo.38.660