ヘモクロマトーシスに罹患した長期透析患者にキレート剤とHPMダイアライザー併用で除鉄療法を行った1例

症例は妊娠中毒症により妊娠子癇および産褥子癇を繰り返し, 急速に腎機能障害が進行して血液透析に導入となった透析歴12年の40歳の女性. 腎性貧血に対してエリスロポエチン製剤投与までの11年間は月2回の割合で200回以上の洗滌赤血球の輸血を受けていたが, この経過中に過剰の鉄が全身に沈着し, 肝障害, 糖尿病および皮膚色素沈着などが出現, 諸検査の結果, 続発性ヘモクロマトーシスと診断された. 除鉄療法としてキレート剤であるディフェロキサミン (DFO) 1,000mgを週3回, 透析時に計40回投与するとともにDFOの透析性を考慮し, DFO投与時にはHPMダイアライザーを併用し, 諸臓器の不...

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Published in日本透析療法学会雑誌 Vol. 26; no. 11; pp. 1721 - 1724
Main Authors 江本, 俊秀, 矢崎, 洋子, 中西, ひろ子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本透析医学会 28.11.1993
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ISSN0911-5889
1884-6211
DOI10.4009/jsdt1985.26.1721

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Summary:症例は妊娠中毒症により妊娠子癇および産褥子癇を繰り返し, 急速に腎機能障害が進行して血液透析に導入となった透析歴12年の40歳の女性. 腎性貧血に対してエリスロポエチン製剤投与までの11年間は月2回の割合で200回以上の洗滌赤血球の輸血を受けていたが, この経過中に過剰の鉄が全身に沈着し, 肝障害, 糖尿病および皮膚色素沈着などが出現, 諸検査の結果, 続発性ヘモクロマトーシスと診断された. 除鉄療法としてキレート剤であるディフェロキサミン (DFO) 1,000mgを週3回, 透析時に計40回投与するとともにDFOの透析性を考慮し, DFO投与時にはHPMダイアライザーを併用し, 諸臓器の不可逆的障害への進展阻止に努めた. その結果, 血清フェリチン値が7,800→187ng/ml,肝のCT値108.5→81.7, ヘモグロビンA1は12.5→5.6, A1C 11.2→4.6mg/dl, GOT 62→29IU, GPT 71→19IUと改善された. 貧血のコントロールがエリスロポエチン製剤投与により可能となった現在では, 輸血後遺症としての鉄過剰症に対してDFO投与およびHPMダイアライザー併用療法が有効な手段になると考えられた.
ISSN:0911-5889
1884-6211
DOI:10.4009/jsdt1985.26.1721