慢性腎不全における糖代謝異常に対する二次性副甲状腺機能亢進症の影響

慢性腎不全 (CRF) に糖代謝異常が合併しやすいことは知られているが, その原因はまだ明確になってはいない. 副甲状腺ホルモン (PTH) も尿毒症毒素として関与している可能性が指摘されている. 我々はインスリン分泌とインスリン抵抗性の点から腎性副甲状腺機能亢進症での糖代謝異常を, 高PTH血症の血液透析 (HD) 患者8名 (2HPT群) と正PTH血症のHD患者7名 (EPT群) およびHD患者で副甲状腺摘除術 (PTX) を受けた5名 (PTX群) を対象として臨床的に検討した. CRFの原疾患が糖尿病性腎症であるものは除外した. 2HPT群, EPT群に対して静注ブドウ糖負荷試験 (...

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Published in日本透析療法学会雑誌 Vol. 26; no. 10; pp. 1599 - 1605
Main Authors 国井, 良彦, 平沢, 由平, 鈴木, 正司
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本透析医学会 28.10.1993
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ISSN0911-5889
1884-6211
DOI10.4009/jsdt1985.26.1599

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Summary:慢性腎不全 (CRF) に糖代謝異常が合併しやすいことは知られているが, その原因はまだ明確になってはいない. 副甲状腺ホルモン (PTH) も尿毒症毒素として関与している可能性が指摘されている. 我々はインスリン分泌とインスリン抵抗性の点から腎性副甲状腺機能亢進症での糖代謝異常を, 高PTH血症の血液透析 (HD) 患者8名 (2HPT群) と正PTH血症のHD患者7名 (EPT群) およびHD患者で副甲状腺摘除術 (PTX) を受けた5名 (PTX群) を対象として臨床的に検討した. CRFの原疾患が糖尿病性腎症であるものは除外した. 2HPT群, EPT群に対して静注ブドウ糖負荷試験 (0.5g/kg, ivGTT) およびグルカゴン負荷試験 (Glucagon 1mg静注, GLT) を行い, 血糖, IRIを測定した. また, PTX群では術前および術後で人工膵臓STG-11Aを用いてEuglycemic clamp studyを行い, 以下の結果を得た. 1) ivGTTでのK値は2HPT群1.30±0.3, EPT群1.39±0.3と2HPT群で低い傾向にあるが有意ではなかった. 2) ivGTTでのIRI反応は%IRIの頂値で2HPT群, EPT群に有意差はなく, IRI曲線下面積 (AUC) でも2HPT群, EPT群に有意差は認められなかった. 3) GLTにおいても2HPT群とEPT群では%IRI頂値, IRI・AUCともに有意差は認められなかった. 4) PTX群でのclamp studyでは, M値, MCRともに術後に有意な上昇を示し, インスリン抵抗性の改善を認めた. 今回の我々の検討では, ivGTT, GLTと膵島B細胞に二種類の刺激を加えた場合, 2HPT群でもEPT群と同程度のインスリン分泌が認められた. この点から高PTH状態でもインスリン分泌はなお予備能を持つと思われた. また, PTXにより高PTH血症が是正された場合, 組織のインスリン感受性が改善されることが示された. 従って高PTH血症は組織インスリン感受性を低下させることでCRFの糖代謝異常に関与している可能性があると考えられた.
ISSN:0911-5889
1884-6211
DOI:10.4009/jsdt1985.26.1599