他覚的聴力検査の有用性と問題点について

目的:機能性難聴は聴覚路のいずれにも異常を認めないが, 自覚的に難聴があり聴力検査で閾値の上昇が認められる場合をいう. 今回, 難聴を主訴に当院に来院した3症例について, 他覚的聴力検査の有用性と問題点について検討したので報告する. 対象および方法:症例‐1:5歳♀, 主訴:左耳難聴 症例‐2:10歳♀, 主訴:耳鳴り, めまい, 頭痛 症例‐3:17歳♂主訴:めまい, 両耳難聴, 頭痛 の3症例について, 初診時に標準純音聴力検査およびアブミ骨筋反射(以下SR)を施行し, 検討した. 結果:症例‐1 初診時の聴力検査では, 右耳は正常, 左耳は聾型であった. SRは, 右耳でIPSI-CON...

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Published inJournal of Nippon Medical School Vol. 70; no. 6; p. 606
Main Authors 野原秀明, 加藤政利, 緒方たつ子, 斎藤公一, 本間博, 池園哲郎, 八木聰明
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本医科大学医学会 15.12.2003
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ISSN1345-4676

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Summary:目的:機能性難聴は聴覚路のいずれにも異常を認めないが, 自覚的に難聴があり聴力検査で閾値の上昇が認められる場合をいう. 今回, 難聴を主訴に当院に来院した3症例について, 他覚的聴力検査の有用性と問題点について検討したので報告する. 対象および方法:症例‐1:5歳♀, 主訴:左耳難聴 症例‐2:10歳♀, 主訴:耳鳴り, めまい, 頭痛 症例‐3:17歳♂主訴:めまい, 両耳難聴, 頭痛 の3症例について, 初診時に標準純音聴力検査およびアブミ骨筋反射(以下SR)を施行し, 検討した. 結果:症例‐1 初診時の聴力検査では, 右耳は正常, 左耳は聾型であった. SRは, 右耳でIPSI-CONTRA共に反応があったが, 左耳は無反応であった. しかし右耳のCONTRA(左耳刺激)で反射を認めており, 両耳とも聴力閾値は正常と考えられた. 症例‐2 両耳とも中等度の水平型感音難聴を認めたが, SRは右耳のIPSICONTRAで正常, 左のIPSIでparadoxicalな反射(鼓膜張筋の反射と思われる), CONTRAで無反応であった. このため症例‐1と同様に両耳の聴力閾値はSRから推測すると正常範囲と考えられた. 症例‐3 右耳で水平型中等度感音難聴, 左耳で水平型軽度感音難聴を認めた. SRは両耳のIPSI-CONTRAとも反射を認めたため両耳の聴力閾値は正常範囲と考えられた. 考察:自覚的検査である標準純音聴力検査に他覚的検査としてのSRを組み合わせることは, 初診時での機能性難聴のスクリーニングとしては非常に有用であると思われる. 本症例のように一側SRが無反応(おそらくアブミ骨筋あるいは筋神経枝の障害と思われる)の場合にはその判定に注意を要する. またさらに精密聴力検査やABRも組合わせて診断を確定する.
ISSN:1345-4676