細胞移植における組織適合性の総合的考え方

輸血領域は細胞治療学へ発展途上にあり, 再生医療の一端を担いつつある. 造血幹細胞移植は再生医療として, 腫瘍の免疫療法として, 唯一実用化されている医療である. 造血幹細胞移植の進化の著しいところは, 移植原と移植方法の多様化である. もうひとつは「組織適合性の考え方」でありそれを述べる. 1. HLAとマイナー組織適合性抗原 HLAを「ヒト主要組織適合性抗原」とよび, HLA以外の組織適合性抗原を「マイナー組織適合性抗原(mHAs)」と称し, HLA適合性のみが重視されてきた歴史がある. 臨床データが蓄積されてみると, mHAsは造血幹細胞移植にとって, 決してマイナー, リーガーではない...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 52; no. 1; pp. 87 - 88
Main Author 佐治博夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 10.03.2006
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ISSN0546-1448

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Summary:輸血領域は細胞治療学へ発展途上にあり, 再生医療の一端を担いつつある. 造血幹細胞移植は再生医療として, 腫瘍の免疫療法として, 唯一実用化されている医療である. 造血幹細胞移植の進化の著しいところは, 移植原と移植方法の多様化である. もうひとつは「組織適合性の考え方」でありそれを述べる. 1. HLAとマイナー組織適合性抗原 HLAを「ヒト主要組織適合性抗原」とよび, HLA以外の組織適合性抗原を「マイナー組織適合性抗原(mHAs)」と称し, HLA適合性のみが重視されてきた歴史がある. 臨床データが蓄積されてみると, mHAsは造血幹細胞移植にとって, 決してマイナー, リーガーではないことがわかった. すなわち, 移植後の主要な抗腫瘍効果(GVT)は, ドナーT細胞が, 腫瘍細胞上の不適合mHAsを認識して反応する免疫反応であること, そして最大の予後要因であるGVHDの発症に, mHAsがHLAより大きなマグニチュードで影響することなどである. HLA一致同胞間のGVHDは, 23%に起こるが, これの原因はmHAsであることは明確であり, 同胞間HLAミスマッチ移植ではGVHDが34%に起こる. HLA不適合による増加分11%がHLAによるGVHDのマグニチュードといえる. mHAsによるマグニチュード:23%は, それをはるかに上回る(図参照). また, mHAs不適合確率は非血縁間は親子, 同胞の約2倍高い. 血縁を重視すべき所以であり, HLAミスマッチHaploidentical移植実施の根拠となる.
ISSN:0546-1448