長期間リハビリテーションアプローチを施行し得ている小児多形性膠芽腫の1例

一般に, 多形性膠芽腫は, 比較的経過が早く, 予後不良であることから, 長期的なリハビリテーション(以下, リハ)計画をたてることは, 稀と思われる. 今回, 我々は, 約3年間, リハアプローチを行っている小児例を経験したので報告する. 「症例」3歳男児. 1995年7月, 左下肢麻痺が出現し, 頭部CTで右前頭葉から頭頂葉の脳腫瘍を指摘され, 生検にて多形性膠芽腫と診断. 8月, CTガイド下放射線照射を行った. 同年10月より左片麻痺が増悪し, 頭部を初診. 短下肢装具を作成し, 歩行の安定性をはかった. 以後, 腫瘍の再増殖にともない, 部分切除術, シャント術等を施行している. 経...

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Published inリハビリテーション医学 Vol. 36; no. 11; p. 843
Main Authors 市川久恵, 横畠由美子, 久保長生, 岩田誠
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本リハビリテーション医学会 18.11.1999
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ISSN0034-351X

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Summary:一般に, 多形性膠芽腫は, 比較的経過が早く, 予後不良であることから, 長期的なリハビリテーション(以下, リハ)計画をたてることは, 稀と思われる. 今回, 我々は, 約3年間, リハアプローチを行っている小児例を経験したので報告する. 「症例」3歳男児. 1995年7月, 左下肢麻痺が出現し, 頭部CTで右前頭葉から頭頂葉の脳腫瘍を指摘され, 生検にて多形性膠芽腫と診断. 8月, CTガイド下放射線照射を行った. 同年10月より左片麻痺が増悪し, 頭部を初診. 短下肢装具を作成し, 歩行の安定性をはかった. 以後, 腫瘍の再増殖にともない, 部分切除術, シャント術等を施行している. 経過中, 左片麻痺および痙性の増悪, 左半側空間無視を認め, バランス訓練, 立位歩行訓練, 両手動作訓練等を行ってきた. また, 成長と痙性の変化に合わせ, 装具の改良を随時行っているが, 就学準備として, 車椅子の作成, 学校生活での問題点に対する検討を進めている. 「おわりに」予後不良とされている脳腫瘍患者の場合, 早期の自宅退院実現がリハのゴール設定となることが多い. しかし, 本例のように, 長期のリハアプローチが必要となる例もあり, 特に小児では, 身体的不自由の克服が心理的発達に影響することを踏まえ, 単に腫瘍の組織型に固執することなく, 個々の症例での要求を十分検討し, 経時的変化に合わせたゴールを設定したうえで, リハを行う必要があると思われた.
ISSN:0034-351X