ヒト肝芽細胞腫におけるJAK/STAT系の抑制因子異常

目的:我々は以前ゲノムスクリーニング法によってヒト原発性肝癌の88%と高率に減弱するJAKキナーゼの標的因子STAT3の制御因子SOCS1を見い出し, その肝発癌への関与について確認した. 今回我々は肝芽細胞腫におけるSOCS1の発現および調節の異常について検討した. 対象および方法:肝芽細胞腫16例を対象に用いた. 遺伝子異常の解析には各材料よりゲノムDNAを抽出し, PCR-SSCP法により遺伝子変異の有無について検索した. さらに, メチル化の検索にはエキソン領域内のCpG rich regionを対象にメチル化感受性制限酵素による切断の後PCR増幅により検出を試みた. 組織での発現は免...

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Published inJournal of Nippon Medical School Vol. 70; no. 6; p. 591
Main Authors 嶺岸正治, 駒崎敏昭, 寺田淑恵, 矢部彩, 沖野恵子, 江見充, 永井尚生, 金恩京, 川並汪一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本医科大学医学会 15.12.2003
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Summary:目的:我々は以前ゲノムスクリーニング法によってヒト原発性肝癌の88%と高率に減弱するJAKキナーゼの標的因子STAT3の制御因子SOCS1を見い出し, その肝発癌への関与について確認した. 今回我々は肝芽細胞腫におけるSOCS1の発現および調節の異常について検討した. 対象および方法:肝芽細胞腫16例を対象に用いた. 遺伝子異常の解析には各材料よりゲノムDNAを抽出し, PCR-SSCP法により遺伝子変異の有無について検索した. さらに, メチル化の検索にはエキソン領域内のCpG rich regionを対象にメチル化感受性制限酵素による切断の後PCR増幅により検出を試みた. 組織での発現は免疫組織染色法を用いた. 結果:SOCS1の発現は癌部でその発現低下が認められた. 遺伝子の体細胞変異は見い出されなかったが, エキソン領域の癌部におけるde novoメチル化が発現の低下した症例で認められ, この遺伝子が不活性化されるメカニズムを新たに見い出した. 考察:JAK/STAT系のinhibitor SOCS1のメチル化による不活性化とそれに伴う系の制御機構の破綻が, 肝芽細胞腫発生に重要な役割を果たしていることが示唆された.
ISSN:1345-4676