消化器外科手術における自己輸血の有用性と問題点に関する検討

目的:消化器外科手術において術前より遺伝子組み替えヒトエリスロポエチン(EPO)投与下で自己血貯血を施行し, 自己血輸血の有用性と問題点を検討した. 対象と方法:当科に入院した担癌症例25例(肝癌9例, 食道癌8例, 膵癌3例, 胃癌2例, 直腸癌2例, 大腸癌1例)を対象とし, 術前2～3週前より週1回400mlを貯血, EPO6,000単位を週3回静注した. Hb, Ht, 網状赤血球, 血清鉄, フェリチン, UIBCを貯血前後で測定し比較検討した. また術中輸血の種類により自己血群, 同種血群, 無輸血群の3群に分類し, CD4/CD8, NK活性, IAP, PHAを術前後に測定し比...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 43; no. 4; p. 647
Main Authors 篠塚望, 小山勇, 門倉正樹, 長島直樹, 大畑昌彦, 安西春幸, 山崎達雄, 尾本良三
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.08.1997
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Summary:目的:消化器外科手術において術前より遺伝子組み替えヒトエリスロポエチン(EPO)投与下で自己血貯血を施行し, 自己血輸血の有用性と問題点を検討した. 対象と方法:当科に入院した担癌症例25例(肝癌9例, 食道癌8例, 膵癌3例, 胃癌2例, 直腸癌2例, 大腸癌1例)を対象とし, 術前2～3週前より週1回400mlを貯血, EPO6,000単位を週3回静注した. Hb, Ht, 網状赤血球, 血清鉄, フェリチン, UIBCを貯血前後で測定し比較検討した. また術中輸血の種類により自己血群, 同種血群, 無輸血群の3群に分類し, CD4/CD8, NK活性, IAP, PHAを術前後に測定し比較検討した. 結果:平均貯血量は840ml, 平均EPO投与回数は6.4回であった. 入院時及び術前日のHbの平均は, 12.6±1.7, 11.5±1.5g/dlとなり有意に低下したが網赤血球, 血清鉄, フェリチン, UIBCには有意差は認めなかった. 25例中20例(85%)に術中同種血輸血を回避できたが, 5例(肝癌4例, 食道癌1例)に必要とした. CD4/CD8は3群間で明らかな差は認めなかったが, NK活性は術後4日目より同種血輸血群で他の2群に比し有意に低下し, 前値に回復するのに時間を要した. 結論:消化器外科領域での血己血輸血は免疫能の面からも極めて有用と思われたが, EPOの使用方法及び肝癌症例では, さらに検討が必要と思われた.
ISSN:0546-1448