若年時の縦隔放射線治療の23年後に発症した放射線誘発性心臓病(Radiation-induced heart disease)の1例

「Abstract」症例は41歳男性. 主訴は呼吸困難. 24年前に悪性胸腺腫の診断で化学療法後胸腺全摘出手術を施行され, 23年前に合計40grayの放射線治療を受けた. 数年前から歩行時の呼吸困難と寒冷時の胸痛を自覚していた. 1カ月前から咳嗽, 夜間の呼吸困難を自覚し, 近医で胸水の貯留を指摘され, 当院受診. 心電図上, 左室肥大ストレイン, 血中BNP高値を認めた. 心エコー検査で左室肥大, びまん性左室収縮不全および大動脈弁狭窄を認めた. 胸部CT検査では, 上行大動脈, 大動脈弁, 右冠動脈入口部, 左冠動脈前下行枝に石灰化を認めた. 心不全の診断で入院し, 改善後の心臓カテーテ...

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Published in心臓 Vol. 50; no. 9; pp. 1005 - 1012
Main Authors 山口世堯, 齋藤誠, 間宮慶太, 湯淺大祐, 渡辺洋樹, 田中俊郎, 植村祐介, 度会正人
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本心臓財団・日本循環器学会 15.09.2018
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ISSN0586-4488

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Summary:「Abstract」症例は41歳男性. 主訴は呼吸困難. 24年前に悪性胸腺腫の診断で化学療法後胸腺全摘出手術を施行され, 23年前に合計40grayの放射線治療を受けた. 数年前から歩行時の呼吸困難と寒冷時の胸痛を自覚していた. 1カ月前から咳嗽, 夜間の呼吸困難を自覚し, 近医で胸水の貯留を指摘され, 当院受診. 心電図上, 左室肥大ストレイン, 血中BNP高値を認めた. 心エコー検査で左室肥大, びまん性左室収縮不全および大動脈弁狭窄を認めた. 胸部CT検査では, 上行大動脈, 大動脈弁, 右冠動脈入口部, 左冠動脈前下行枝に石灰化を認めた. 心不全の診断で入院し, 改善後の心臓カテーテル検査で, 右冠動脈近位部と左冠動脈近位部に高度狭窄, 左室大動脈圧較差増大, LVEFの低下を認めた. 若年時の放射線照射部位に一致して石灰化を伴う冠動脈動脈硬化, 大動脈弁硬化所見を認め, 放射線誘発性心臓病と診断した. 冠動脈狭窄に対してはPCI治療を施行した. 放射線誘発性心臓病は放射線治療後無自覚に経過し, 原病の経過観察終了後に心臓症状が出現する可能性があり慎重な経過観察が必要である.
ISSN:0586-4488