PCR法による歯からの性別判定 - とくに海水と土中の影響について

「緒言」 法医歯科学領域における身元不明死体の個人識別で最も重要なものは歯である. これは, 近年, 航空機事故などの大規模災害, また, 凶悪犯罪に関する白骨死体およびバラバラ死体など, 損傷の激しい遺体が発見されることが多く, これらの場合には, 硬組織である歯から個人識別を行うことが最も有効であり, その検屍方法は, 山本らによって報告されている. また, これらの遺体の場合には, 個人識別を行うにあたってなくてはならない要因のひとつである性別判定が不可能なことが多く見られる. そこで, 歯からの性別判定は, 従来から, 羽賀のエナメル質分光透過率および象牙質の比重, 権田, Ditch...

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Published in神奈川歯学 Vol. 29; no. 3; pp. 217 - 226
Main Authors 宇都宮丈児, 山本勝一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 神奈川歯科大学学会 30.12.1994
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ISSN0454-8302

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Summary:「緒言」 法医歯科学領域における身元不明死体の個人識別で最も重要なものは歯である. これは, 近年, 航空機事故などの大規模災害, また, 凶悪犯罪に関する白骨死体およびバラバラ死体など, 損傷の激しい遺体が発見されることが多く, これらの場合には, 硬組織である歯から個人識別を行うことが最も有効であり, その検屍方法は, 山本らによって報告されている. また, これらの遺体の場合には, 個人識別を行うにあたってなくてはならない要因のひとつである性別判定が不可能なことが多く見られる. そこで, 歯からの性別判定は, 従来から, 羽賀のエナメル質分光透過率および象牙質の比重, 権田, Ditch & Rose, Garn, et al.の歯の計測値, Dixon & Torr, 末永による歯髄細胞の性染色質(sex chromatin)の出現率, また, 石津ら, Senoによる歯髄細胞のY染色体の蛍光小体(F-body)からの出現率などの性別判定が報告されているが, 著者は, 歯髄からDNAを抽出し, Mullis & Faloona, Saiki, et al.によって発表されたpolymerase chain reaction(以下PCRと略す)を用いて性別判定をなった.
ISSN:0454-8302