左臼歯側アプローチを気管内挿管アプローチに取り入れてもよいか

気管内挿管困難症例に対し, 左臼歯側アプローチ(left-molar approach;LtMA)は声門を直視しやすくすることが報告されている(1)(2)(3). 救急の場面で挿管困難症例に遭遇した時にLtMAを行なえば救命率の向上が期待できる. それには日頃からLtMAでの挿管のトレーニングが必要である. しかし臨床の場面では, 患者様の負担にならないようにする必要がある. 今回我々は, 通常の挿管(middle approach;MA)とLtMA間で, 挿管時間の違いと, 挿管前後の血圧, 脈拍変動を調べることにより患者様の負担の程度を調べた. 【対象と方法】対象は予定手術患者40人(AS...

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Published in蘇生 Vol. 22; no. 3; p. 212
Main Authors 小林幹夫, 中川力丸, 小田切徹太郎, 新倉久美子, 長谷川丈, 中川秀之
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本蘇生学会 10.10.2003
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ISSN0288-4348

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Summary:気管内挿管困難症例に対し, 左臼歯側アプローチ(left-molar approach;LtMA)は声門を直視しやすくすることが報告されている(1)(2)(3). 救急の場面で挿管困難症例に遭遇した時にLtMAを行なえば救命率の向上が期待できる. それには日頃からLtMAでの挿管のトレーニングが必要である. しかし臨床の場面では, 患者様の負担にならないようにする必要がある. 今回我々は, 通常の挿管(middle approach;MA)とLtMA間で, 挿管時間の違いと, 挿管前後の血圧, 脈拍変動を調べることにより患者様の負担の程度を調べた. 【対象と方法】対象は予定手術患者40人(ASAPS1~3)で, 充分な説明を行ない同意を得た. 麻酔導入はプロポフォール2mm/kgとケタミン0.5mg/kgで行ない, ベクロニウム0.15mg/kgで筋弛緩を得た. 喉頭鏡はマッキントッシュタイプ#3あるいは#4ブレードを用いた. 挿管時間は, 口の開け始めから挿管後に喉頭鏡を口外に出すまでとした. 最も心がけたのは愛護的に丁寧に挿管することである. データは, 平均±標準偏差で表わし, 統計学的漸はχ2検定, Mann-Whitney U検定で行ない, p<0.05で有意とした. 【結果】患者背景では両群間に差はなかった. 挿管時間はMA群で31±4秒, LtMA群で36±8秒(p=0.025)であり, LtMA群の方が有意に長かった. 血圧, 脈拍は挿管前後で両群間に差はなかった. 【考察および結語】LtMAでの視野は縦1.5cm, 横2cm程度と狭いので時間がかかる. しかしLtMAとMA間の挿管時間の差は5秒程度であり, また循環助態の差はないので, 麻酔科研修医, ローテーション医師, 救急救命士に対してLtMAによる気管内挿管のトレーニングを取り入れてもよいと思われる.
ISSN:0288-4348