(3)ラットTNBS腸炎モデルにおける温熱療法の治療効果とそのメカニズムについての検討

【目的】われわれは, in vitroで温熱前処理がTNFαによるNF-kBの活性化を抑制し, その結果種々の細胞応答が抑制されることを血管内皮細胞株, 胃癌細胞株, 大腸癌細胞株を用いて観察してきた. 今回, ラットTNBS腸炎モデルを用いて, 温熱療法の大腸炎に対する治療効果とそのメカニズムについて検討した. 【方法】SD系雄性ラットにTNBSを経肛門的に大腸に投与し, 腸炎を作成した. このラットに対して, 温熱療法を行なった. 温熱療法は, TNBSを経肛門的に大腸に投与した翌日より, 42度の温水に20分間, 胸部より足側を浸すことにより行なった. 温熱療法は連日5回行なった. 評価...

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Published in日本ハイパーサーミア学会誌 Vol. 22; no. 2; p. 115
Main Authors 古倉聡, 奥田敏充, 坂元直行, 服部武司, 高木智久, 半田修, 磯崎豊, 内藤裕二, 吉田憲正, 吉川敏一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本ハイパーサーミア学会 01.06.2006
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Summary:【目的】われわれは, in vitroで温熱前処理がTNFαによるNF-kBの活性化を抑制し, その結果種々の細胞応答が抑制されることを血管内皮細胞株, 胃癌細胞株, 大腸癌細胞株を用いて観察してきた. 今回, ラットTNBS腸炎モデルを用いて, 温熱療法の大腸炎に対する治療効果とそのメカニズムについて検討した. 【方法】SD系雄性ラットにTNBSを経肛門的に大腸に投与し, 腸炎を作成した. このラットに対して, 温熱療法を行なった. 温熱療法は, TNBSを経肛門的に大腸に投与した翌日より, 42度の温水に20分間, 胸部より足側を浸すことにより行なった. 温熱療法は連日5回行なった. 評価項目として大腸粘膜のdamage score, 大腸粘膜の浮腫の指標としてwet weight, また, 大腸粘膜中の脂質過酸化の指標としてTBARSの測定, 好中球浸潤の指標としてMPO活性の測定, 炎症性サイトカイン(CINC-1)の測定を行った. われわれがこれまでに報告してきた温熱療法の抗炎症作用(主としてin vitroでの検討)のメカニズムの検討結果を踏まえて, 本モデルにおける温熱療法の抗炎症効果のメカニズムを明らかにする目的で, 温熱刺激にて発現する大腸粘膜の急性期蛋白の経時的な発現パターンをwestern blottingにて検討し, また, 発現した蛋白の機能の阻害剤の温熱効果に及ぼす影響について検討した. 【結果】TNBS腸炎の程度は, 今回検討したdamage score, 浮腫の程度, 脂質過酸化物の産生, 好中球の集積, 炎症性サイトカインの発現程度のいずれにおいても, 温熱療法を施行した群で, 有意に改善していた. また, 温熱療法による大腸粘膜中の急性期蛋白発現や発現蛋白の阻害剤の検討からは, HSP70, heme oxygenase-1(HO-1)が腸炎の抑制に関与していると思われた. 【結論】温熱療法は, TNBSの注腸による大腸炎に対して複数のHSPなどの急性期蛋白の発現を介して, 腸炎の改善に有効と考えられた.
ISSN:0911-2529
1881-9516