消化管ポリポーシス症候群の治療

消化管ポリポーシス症候群の適切な治療方針を決定する第一歩は正確な診断である. 遺伝性, 非遺伝性の各種ポリポーシス症候群と遺伝性非ポリポーシス大腸癌などを念頭におき, 臨床, 病理あるいは遺伝子等の多角的な情報を基にした的確な鑑別診断が必要である. 以後, 家族性腺腫性ポリポーシス(FAP)を中心に考察する. [治療の標的]死亡したFAP患者18例中, 大腸癌死が10例(55.6%)と最も多く, ついでデスモイド腫瘍3例, 胃癌1例, Vater乳頭部癌1例, 他病死2例であった. やはり, 大腸癌対策が最重要課題といえる. [FAPの大腸手術]FAP対策として, 早期の大腸癌予防が推奨されて...

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Published in家族性腫瘍 Vol. 1; no. 2; p. 21
Main Authors 田村和朗, 山田貴裕, 権藤延久, 西脇学, 中川一彦, 蘆田寛, 山村武平, 宇都宮譲二, 指尾宏子, 山本義弘, 古山順一, 里見国迪, 下山孝
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 家族性腫瘍研究会 15.05.2001
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ISSN1346-1052

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Summary:消化管ポリポーシス症候群の適切な治療方針を決定する第一歩は正確な診断である. 遺伝性, 非遺伝性の各種ポリポーシス症候群と遺伝性非ポリポーシス大腸癌などを念頭におき, 臨床, 病理あるいは遺伝子等の多角的な情報を基にした的確な鑑別診断が必要である. 以後, 家族性腺腫性ポリポーシス(FAP)を中心に考察する. [治療の標的]死亡したFAP患者18例中, 大腸癌死が10例(55.6%)と最も多く, ついでデスモイド腫瘍3例, 胃癌1例, Vater乳頭部癌1例, 他病死2例であった. やはり, 大腸癌対策が最重要課題といえる. [FAPの大腸手術]FAP対策として, 早期の大腸癌予防が推奨されてきた. FAP100例で検討すると2例が手術待機中, 1例はデスモイド腫瘍のため若年で死亡, 97例が大腸の手術を受けた(初回手術時年齢は33.7歳). 初回に不完全大腸切除(IRAを含む)を受けた22例(22.7%)のうち14例が追加切除手術を受けている. その結果, 大腸全摘+回腸肛門13例(13.4%), Ileo-anal anastmosis(IAA)66例(68.0%), Ileoe-anal canal anastomosis(IACA)8例(8.2%), Ileo-rectal anastomosis(IRA)7例(7.2%), その他大腸部分切除3例であった. 腺腫密度の低い例(<5/平方センチメートル)ではIACA法も選択肢の一つである. 手術の時期, 術式選択は家系内患者の病歴等を参考に個々の病態と社会的状況を考慮し, 決定すべきである. [大腸外病変の治療]胃癌, 十二指腸, 乳頭部病変に対しては定期的監視を続け, 必要ならば内視鏡的切除もしくは胃切除術・PD法等の開腹手術で対処している. 因みに胃腺腫24例中, 組織診でGroup V以上は8例であった. vater乳頭部腺腫は33例認めた. デスモイド腫瘍は大腸癌に続いてIAP患者の予後を左右する腫瘍で, 最も治療困難な病変と考える. 外科的切除のみで対応することは不可能であり, 化学療法を併用した治療を行っている. [おわりに]FAP患者は大腸粘膜以外の臓器も高いmalignant potentialを有しており, 発症前診断のみならず大腸手術後のサーベイランスが重要である. さらに, Genotype-Phenotype correlation等を含めきめ細かな自然史の予測が可能となり, 適切な治療法選択を容易ならしめんことを期待している.
ISSN:1346-1052