ヘパリン起因性血小板減少症II型抗体陽性患者に対してアルガトロバンを使用し, 体外循環を施行した1症例

「要旨」ヘパリン起因性血小板減少症(heparin-induced thrombocytopenia:HIT)II型発症患者に対し, アルガトロバンを使用しての体外循環(cardiopulmonary bypass:CPB)を経験した. 症例は69歳男性, 急性心筋梗塞で当院搬送され, 経皮的冠動脈形成術(percutaneous coronary intervention:PCI)施行後に心室中隔穿孔(ventricular septal perforation:VSP)を合併した. 第23病日目にHIT抗体陽性が認められたが, 全身状態悪化のためHIT抗体陰性化を待てずに第24病日目にVS...

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Published in体外循環技術 Vol. 42; no. 4; pp. 428 - 435
Main Authors 堀口敦史, 天沼健介, 野堀耕佑, 樋口知之, 市橋孝章, 春田良雄
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本体外循環技術医学会 01.12.2015
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ISSN0912-2664

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Summary:「要旨」ヘパリン起因性血小板減少症(heparin-induced thrombocytopenia:HIT)II型発症患者に対し, アルガトロバンを使用しての体外循環(cardiopulmonary bypass:CPB)を経験した. 症例は69歳男性, 急性心筋梗塞で当院搬送され, 経皮的冠動脈形成術(percutaneous coronary intervention:PCI)施行後に心室中隔穿孔(ventricular septal perforation:VSP)を合併した. 第23病日目にHIT抗体陽性が認められたが, 全身状態悪化のためHIT抗体陰性化を待てずに第24病日目にVSPパッチ閉鎖術を施行した. 人工心肺充填液にアルガトロバンを0.05mg/kg添加, 胸骨正中切開時に中心静脈ラインから0.1mg/kg初回投与後, 6μg/kg/minで持続投与し, CPB開始後は貯血槽から持続投与した. CPB離脱時に持続投与を停止したが, 離脱直後に循環動態不安定になり, CPBを再開し, 離脱困難と判断したためV-A ECMOにスイッチングした. CPB終了時からアルガトロバン投与は再開しなかったが, ACTが過延長したため止血に難渋した. 本症例は肝機能障害があり, 肝機能障害時はアルガトロバン半減期が延長する報告や, 投与量を減量することを推奨するガイドラインもあるため, 早期の投与中止も検討できたが, 回路凝固に対する安全を考慮すると難しいと考える. HITに対してアルガトロバンを使用したCPBは, 病態に合わせたACT管理と投与量の検討が必要と考える.
ISSN:0912-2664