難聴児療育システムの構築 - 新生児期 (新生児聴覚スクリーニング, 先天性サイトメガロウイルス感染症含む)
2003年10月以来, 長崎県では全県新生児聴覚スクリーニング(以下新スク)が導入開始された. 政治, 行政, 医療, 教育関係者等, 多職種の方々と連携しながら長崎県の全県新スクは18年間継続してきている. 新スク実施率は年ごとの変動はあるが公費補助を長年受けて95~100%である. 新スクのシステムと長崎県の新生児期先天性サイトメガロウイルス感染症診断・治療システムを述べる. 先天性サイトメガロウイルス感染症は3週間以内に診断し, できるだけ早期に1カ月以内に治療を開始するシステムが産科・耳鼻咽喉科・小児科の連携のもと続けられている. そのほか, 長崎県新スクにおける妊婦への啓発と出産後の...
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Published in | 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報 Vol. 124; no. 9; pp. 1262 - 1269 |
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Main Authors | , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
20.09.2021
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ISSN | 2436-5793 |
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Summary: | 2003年10月以来, 長崎県では全県新生児聴覚スクリーニング(以下新スク)が導入開始された. 政治, 行政, 医療, 教育関係者等, 多職種の方々と連携しながら長崎県の全県新スクは18年間継続してきている. 新スク実施率は年ごとの変動はあるが公費補助を長年受けて95~100%である. 新スクのシステムと長崎県の新生児期先天性サイトメガロウイルス感染症診断・治療システムを述べる. 先天性サイトメガロウイルス感染症は3週間以内に診断し, できるだけ早期に1カ月以内に治療を開始するシステムが産科・耳鼻咽喉科・小児科の連携のもと続けられている. そのほか, 長崎県新スクにおける妊婦への啓発と出産後のケア, 難聴診断後のご家族への精神的ケアとペアレントトレーニングなどを解説し, 新スクpass後の難聴発生・進行の予防や豊かな言葉が育つための説明なども記した. また, 新スクのない時期と, 新スク開始後の時期と比較し, 診断, 介入, 補聴器開始時期は, いずれも新スク開始によって有意に早くなっており, 人工内耳装用児の研究では新スクを受けた児の通常学校進学率は84.3%で, 新スクを受けた児が新スクを受けていない児よりも2.9倍通常学校に進学しやすい結果であった. 先天性サイトメガロウイルス感染児においても通常学校への進学は92%と高い結果であった. 手術年ごとの人工内耳装用児の通常学校就学率を比較すると, 新スクが始まった2003年の6年後の2009年頃から通常学校就学率は約80~90%と増大した. また, このような新スクの進歩と診断技術の進歩, そして補聴器の性能アップなどにより一側難聴でも補聴器を装用するケースが近来増加しており, 当施設の一側難聴への現時点での指針を記した. さらに当施設の体制やシステム構築の歴史的背景を述べた. |
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ISSN: | 2436-5793 |