ABO血液型モザイクの免疫遺伝学的解析

【目的】B型モザイクと血清学的検査で判定された症例について免疫遺伝学的解析を実施した. 【方法】B型モザイク男性の末梢血および末梢血より抽出精製したDNAとmRNAを用いて解析を実施した. (i)血清学的検査(II)FACS解析:Hl:RBCDILで処理した赤血球に抗B抗体を反応させた後, 抗マウスFITC標識抗体を作用させ, FACS解析を行った. (iii)ABO遺伝子解析:PCR-RFLP法を用いて遺伝子型を同定した. 解析部位はO遺伝子欠失部位である塩基261とA, O, Bとで塩基置換の認められる塩基467, 526, 703, 796である. また, RT_PCR法によりmRNAの...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 43; no. 2; p. 227
Main Authors 阿南和昭, 小林賢, 岩崎誠, 阿藤みや子, 鈴木由美, 鈴木洋司, 堀越啓子, 荻原理恵, 豊田道子, 渡辺幸恵, 峰正英, 坂口武司, 太田正穂, 勝山善彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.04.1997
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ISSN0546-1448

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Summary:【目的】B型モザイクと血清学的検査で判定された症例について免疫遺伝学的解析を実施した. 【方法】B型モザイク男性の末梢血および末梢血より抽出精製したDNAとmRNAを用いて解析を実施した. (i)血清学的検査(II)FACS解析:Hl:RBCDILで処理した赤血球に抗B抗体を反応させた後, 抗マウスFITC標識抗体を作用させ, FACS解析を行った. (iii)ABO遺伝子解析:PCR-RFLP法を用いて遺伝子型を同定した. 解析部位はO遺伝子欠失部位である塩基261とA, O, Bとで塩基置換の認められる塩基467, 526, 703, 796である. また, RT_PCR法によりmRNAの発現を検討した. (iv)HLAタイピング:血清学およびDNAタイピング法(PCR-SSO法およびPCR-RFLP法)を用いてHLAタイプを決定した. (v)多型性解析:染色体1, 4, 5, 6, 11, 12, 16, 22, Xについてのshort tandem repeat(STR)解析を実施した. 【結果】(i)抗B抗体でmix fieldを示す以外, その他の血液型ではmix fieldは確認されなかった. また, 抗B非凝集赤血球と全赤血球とではABO以外の血液型に違いは見られなかった. (ii)FACS解析の結果, B抗原陽性赤血球と陰性赤血球の比率は1:9であった. そのパターンは完全に独立した二峰性であり, 陽性群と陰性群とが明瞭に区別できた. (iii)ABO遺伝子型はBO型であったが, 解析したすべての部位で泳動上B遺伝子由来のDNA断片がO遺伝子に対して非常に薄かった. mRNAもO遺伝子の方が濃く認められた. このことからB遺伝子とO遺伝子とには量的な差が生じているものと思われた. (iv)HLAではキメラを示す所見は確認できなかった. (v)染色体上のSTRを用いて染色体キメラを解析したが, 利用したSTR12ヶ所何れも肯定できる所見は確認できなかった. 【結論】B型モザイク例の免疫遺伝学的解析を行った結果, ABO遺伝子がDNAレベルでモザイクであることを明らかにした. 今後, より詳細な検討を行う予定である.
ISSN:0546-1448