コミュニケーション障害とその機能局在 : 臨床とfMRIの知見から

失語症について病巣局在を知る上で最も有用な要素的症状は, (1) アナルトリー(≒失構音, 発語失行), (2)音韻性錯語, (3)喚語困難, (4)単語理解障害である. (1)は左中心前回中~下部後方, (2)は左上側頭回~縁上回~中心前回およびそれらの皮質下, (3)は左下前頭回, 左角回, 左側頭葉後下部, (4)は左中前頭回, 左上~中側頭回後部などが重要である. (3)や(4)では前方病巣と後方病巣があるが, それらは両者の障害メカニズムの相違を示せるようなタスクで区別可能である. fMRIの知見と臨床の知見は必ずしも一致しないといわれているが, 例えば単語の想起課題では, 音を手が...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published inコミュニケーション障害学 Vol. 24; no. 1; pp. 29 - 34
Main Author 大槻美佳
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本コミュニケーション障害学会 30.04.2007
Online AccessGet full text
ISSN1347-8451

Cover

More Information
Summary:失語症について病巣局在を知る上で最も有用な要素的症状は, (1) アナルトリー(≒失構音, 発語失行), (2)音韻性錯語, (3)喚語困難, (4)単語理解障害である. (1)は左中心前回中~下部後方, (2)は左上側頭回~縁上回~中心前回およびそれらの皮質下, (3)は左下前頭回, 左角回, 左側頭葉後下部, (4)は左中前頭回, 左上~中側頭回後部などが重要である. (3)や(4)では前方病巣と後方病巣があるが, それらは両者の障害メカニズムの相違を示せるようなタスクで区別可能である. fMRIの知見と臨床の知見は必ずしも一致しないといわれているが, 例えば単語の想起課題では, 音を手がかりに想起するのか, 意味を手がかりに想起するのかなどのストラテジーの相違が賦活部位の相違を反映していると考えられた. このようなストラテジー : 脳がどんな方法を用いてその課題を行うかという視点は, 臨床の知見とfMRIなど機能画像の知見を統合しうる重要な視点のひとつと考えられた.
ISSN:1347-8451