高カリウム血症による循環虚脱の2蘇生例
高カリウム血症による不整脈は重篤で, 治療に難渋することが多い. 今回, 高カリウム血症に起因する重篤な循環虚脱から蘇生し得た2症例を経験したので報告する. 症例1はカリウムを経口で過剰摂取し血清K^+ 7.2mEq/リットルとなり, 院内で心拍数15/minと高度徐脈および呼吸困難・意識障害を来しICUに搬入した. カテコールアミン, Ca^2+ 剤投与にて心拍再開したが収縮期圧約60mmHgとショック状態が続き, グルコース・インスリン療法とフロセマイドを併用することで血圧90/50mmHgと回復し, 血清K^+ も5.8mEq/リットルと低下した. 以後順調に経過し神経学的後遺症もなく翌...
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Published in | 蘇生 Vol. 8; p. 63 |
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Main Authors | , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本蘇生学会
01.05.1990
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ISSN | 0288-4348 |
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Summary: | 高カリウム血症による不整脈は重篤で, 治療に難渋することが多い. 今回, 高カリウム血症に起因する重篤な循環虚脱から蘇生し得た2症例を経験したので報告する. 症例1はカリウムを経口で過剰摂取し血清K^+ 7.2mEq/リットルとなり, 院内で心拍数15/minと高度徐脈および呼吸困難・意識障害を来しICUに搬入した. カテコールアミン, Ca^2+ 剤投与にて心拍再開したが収縮期圧約60mmHgとショック状態が続き, グルコース・インスリン療法とフロセマイドを併用することで血圧90/50mmHgと回復し, 血清K^+ も5.8mEq/リットルと低下した. 以後順調に経過し神経学的後遺症もなく翌日無事ICUを退室した. 症例2は, 慢性腎不全の患者で病識に乏しく食事コントロール不良のため高K血症(血清K^+ 7.1mEq/リットルとなり, 外来で心停止・呼吸停止を起こし倒れる. 心電図にて心室細動を認め, 気管内挿管し心マッサージ下にICUに搬入した. 直流除細動, Ca^2+ 剤, フロセマイド, グルコース・インスリン療法を行うも心室粗動・細動を繰り返すため, 右大腿静脈より二重管を挿入し血液透析を開始する. 透析開始10分後, 血清K^+ 6.2mEq/リットルと低下し, 直流除細動とエピネフリン1mgにて洞調律に復し, 以後循環動態は安定した. 入室時より意識障害(3-3-9度方式にて200-300点)および右半身麻痺を認めたが, 徐々に改善し入室16日目にICU退室する. 発症2ヵ月後には会話正常となり現在リハビリ中である. <考察>高カリウム血症では, 静止膜電位の上昇により重症例では心停止を起こす. 高カリウム血症の治療法としては, Ca^2+ 剤, グルコース・インスリン療法, 炭酸水素ナトリウム, イオン交換樹脂, 血液透析がある. 前者3つは細胞外カリウムを細胞内に移行させる方法で, 心停止・循環不全によるアシドーシスでは細胞内から細胞外にカリウムが移行するため, 心マッサージ下にカリウムを体外に排出する緊急血液透析が有効であった. |
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ISSN: | 0288-4348 |