がんと結核・非結核性抗酸菌症

「要旨」 : かつて肺癌は肺結核の疫学的後継者とされたが, 今日でも結核既往は肺癌リスク因子である. がん患者には結核の内因性再燃が起きる場合があり, 血液腫瘍や肺癌は結核リスクの高い腫瘍である. 近年, 免疫治療中の結核が注目されているが, 実際には様々ながん診療状況下で結核が発症し, 特にステロイド治療中の発症が多いことを熟知すべきである. がん診療時の結核対策では, がん治療前の問診や胸部CTと必要に応じてインターフェロン-γ遊離試験や潜在性結核感染症治療も考慮すべきである. がんと結核の合併例ではがん治療開始を遅らせることを避け, 積極的に両疾患同時治療を行わなければならない. 近年,...

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Published in結核 Vol. 97; no. 1; pp. 13 - 20
Main Author 田村厚久
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本結核・非結核性抗酸菌症学会 15.01.2022
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ISSN0022-9776

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Summary:「要旨」 : かつて肺癌は肺結核の疫学的後継者とされたが, 今日でも結核既往は肺癌リスク因子である. がん患者には結核の内因性再燃が起きる場合があり, 血液腫瘍や肺癌は結核リスクの高い腫瘍である. 近年, 免疫治療中の結核が注目されているが, 実際には様々ながん診療状況下で結核が発症し, 特にステロイド治療中の発症が多いことを熟知すべきである. がん診療時の結核対策では, がん治療前の問診や胸部CTと必要に応じてインターフェロン-γ遊離試験や潜在性結核感染症治療も考慮すべきである. がんと結核の合併例ではがん治療開始を遅らせることを避け, 積極的に両疾患同時治療を行わなければならない. 近年, がんと非結核性抗酸菌 (nontuberculous mycobacteriosis : NTM) 症にも関心が向けられ, NTM症も肺癌リスクが高いことが判明した. 両疾患の合併では, 以前は男性, 肺扁平上皮癌の肺M. kansasii症例が多かったが, 最近は女性, 肺腺癌の肺M. avium complex症例が多数である. がんと抗酸菌症合併例の画像診断では様々な知覚的課題の影響下に発生するdoctor's delayに留意すべきである.
ISSN:0022-9776