シベンゾリンにより左室流出路圧較差が著明に減少した閉塞性肥大型心筋症の1例

シベンゾリンが著効した閉塞性肥大型心筋症の1例を呈示する. 症例は82歳, 女性. β遮断薬が無効な軽労作での息切れ症状のため入院した. 心エコー図で非対称性心室中隔肥厚, SAMを認め, 180mmHgを超える左室流出路圧較差が検出された. 心臓カテーテル法により, シベンゾリンの急性投与が血行動態に及ぼす影響を検討した. 本薬剤の静注により, 圧較差は144mmHgから6mmHgまで減少した. この時, 左室圧一次微分値は低下, 左室拡張末期圧は下降, 心係数は不変, 収縮期血圧と末梢血管抵抗は増大した. 以後同薬剤300mg/日の内服投与で症状は著明に軽減し, 6ヵ月後の心エコー図上SA...

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Published in心臓 Vol. 33; no. 6; pp. 531 - 536
Main Authors 高田佳史, 末定弘行, 首藤裕, 雨宮正, 高江久仁, 槙村進, 伊藤茂樹, 三島好雄, 山科章
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 丸善 15.06.2001
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ISSN0586-4488

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Summary:シベンゾリンが著効した閉塞性肥大型心筋症の1例を呈示する. 症例は82歳, 女性. β遮断薬が無効な軽労作での息切れ症状のため入院した. 心エコー図で非対称性心室中隔肥厚, SAMを認め, 180mmHgを超える左室流出路圧較差が検出された. 心臓カテーテル法により, シベンゾリンの急性投与が血行動態に及ぼす影響を検討した. 本薬剤の静注により, 圧較差は144mmHgから6mmHgまで減少した. この時, 左室圧一次微分値は低下, 左室拡張末期圧は下降, 心係数は不変, 収縮期血圧と末梢血管抵抗は増大した. 以後同薬剤300mg/日の内服投与で症状は著明に軽減し, 6ヵ月後の心エコー図上SAMは不顕性化, E/A比は増加, 圧較差は46mmHgに減少した. 血漿BNP濃度は治療前の627pg/mZから経口投与5日後には151pg/mlまで低下, 6ヵ月後には126pg/mlと低値を維持した. シベンゾリンは閉塞性肥大型心筋症に対して極めて有効な治療薬となる可能性がある. 本薬剤が有効な機序として, 陰性変力作用とともに後負荷増強作用と左室拡張機能の改善作用の関与が示唆された.
ISSN:0586-4488