治療に難渋したmultivessel coronary spasmの一例
冠攣縮性狭心症患者のほとんどは, 薬物療法により冠攣縮が抑制され予後も良好であることが多いが, 一部には薬剤抵抗性を示す症例も存在し心筋梗塞や致死性不整脈, 突然死の原因となりうる. 今回, 薬物治療開始後に難治性の冠攣縮を生じたmultivessel coronary spasmの1例を経験したので報告する. 症例は56歳男性. 2007年4月10日未明, 就寝中に突然胸部絞扼感が出現し救急要請. 当院救急外来へ搬送された. 病院到着時には症状は改善していた. 心電図は正常であったが, 血液検査でトロポニンIの軽度上昇を認めた. 心エコー検査ではasynergyを認めなかった. 急性冠症候群...
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Published in | 山口医学 Vol. 56; no. 6; p. 233 |
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Main Authors | , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
山口大学医学会
31.12.2007
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ISSN | 0513-1731 |
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Summary: | 冠攣縮性狭心症患者のほとんどは, 薬物療法により冠攣縮が抑制され予後も良好であることが多いが, 一部には薬剤抵抗性を示す症例も存在し心筋梗塞や致死性不整脈, 突然死の原因となりうる. 今回, 薬物治療開始後に難治性の冠攣縮を生じたmultivessel coronary spasmの1例を経験したので報告する. 症例は56歳男性. 2007年4月10日未明, 就寝中に突然胸部絞扼感が出現し救急要請. 当院救急外来へ搬送された. 病院到着時には症状は改善していた. 心電図は正常であったが, 血液検査でトロポニンIの軽度上昇を認めた. 心エコー検査ではasynergyを認めなかった. 急性冠症候群疑いで同日入院とし待期的にCAGを行ったところ, LAD#6に25%狭窄を認めるのみで冠動脈に有意狭窄なく, 冠攣縮性狭心症と診断しベニジピン, 一硝酸イソソルビドの内服を開始した. しかし第3病日に突然胸痛が出現. 心電図で胸部誘導のST上昇を認めニトログリセリン舌下を行った. その結果胸部誘導のST上昇は改善したものの胸痛は消失せず, 今度はII・III・aVF誘導でST上昇を認めた. 改善しないため緊急心臓カテーテル検査を行い, LCx#13と#15に冠攣縮を認めともに90%狭窄となっていた. 各種血管拡張薬の冠注を行うも冠攣縮は改善せず, IABPを施行したところ冠攣縮の改善がみられた. 内服薬の変更を行い, ベニジピンをニフェジピンに変更しニコランジルを追加した. その後IABPを離脱したが以降は胸痛発作を生じることなく経過し退院となった. |
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ISSN: | 0513-1731 |