三次救急医療における初期治療対応業務が看護師の身体・気分に及ぼす影響
【目的】日常生活において常に存在するストレスについては, 近年, ストレスを脅威と感じるか, または対処できるか, といった認知の個人差が注目されてきている. 今回, 高度救命救急センターにおける看護業務の中で, 看護師がより強くストレスを感じていると考えられる三次救急医療における初期治療対応業務(以下初療)が, 心と身体に及ぼす影響を調査した. 【対象及び方法】A大学病院高度救命救急センター看護師の中から, 初療中に身体反応の得られた19名を対象とした. 就業前と後にPOMS短縮版を使用し, 気分評価を実施した. 同時に, 就業中の心拍変動(HRV)を測定するために, ポラール社製のリストウ...
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Published in | 心身健康科学 Vol. 6; no. 2; p. 124 |
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Main Authors | , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本心身健康科学会
10.09.2010
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ISSN | 1882-6881 |
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Summary: | 【目的】日常生活において常に存在するストレスについては, 近年, ストレスを脅威と感じるか, または対処できるか, といった認知の個人差が注目されてきている. 今回, 高度救命救急センターにおける看護業務の中で, 看護師がより強くストレスを感じていると考えられる三次救急医療における初期治療対応業務(以下初療)が, 心と身体に及ぼす影響を調査した. 【対象及び方法】A大学病院高度救命救急センター看護師の中から, 初療中に身体反応の得られた19名を対象とした. 就業前と後にPOMS短縮版を使用し, 気分評価を実施した. 同時に, 就業中の心拍変動(HRV)を測定するために, ポラール社製のリストウォッチを使用した. 得られたデータは, 初療前・中・後を解析範囲として, 周波数領域・時間領域で解析した. 解析されたパラメータと, 気分評価で得られた結果, 個人特性とを比較検討した. 【結果及び考察】初療前・中・後の心拍変動係数を(以下CV)個別にみると, 気分変化有群では初療前・中・後にかけて, CVが増加する傾向にある. しかし, 気分変化無群でも初療後にCVが増加するケースもある. したがって, 無意識下の気分の変化と身体反応は必ずしも同じではないと言える. RR間隔の短縮, HF成分の低下, LF/HFの増大という身体的ストレス反応は, 個人特性や初療に対する認識, 気分の影響を受けて, 初療前・中・後の何処かで発生する. そして, 身体的ストレス反応が何処で発生しても, 自律神経機能により, CVが増加し, HRV波形のパワースペクトルのHF成分が減少する. 初療中の身体反応は, 初療に関する経験・資格・認識と相関性が高く, 初療後の身体反応は, 気分変化と相関性が高い. 看護師経験や年齢よりも, 初療経験や資格, 初療に対する認識が, 初療前後の気分に大きな影響を及ぼしている. したがって, 初療は通常業務の中でも, より専門性が高い業務であると言える. 初療に対する認識=意識的(顕在的)であり, 初療前後の気分変化=無意識的(潜在的)である. 潜在的な意識を変えることは難しいが, 顕在化された意識を変えることで, 身体反応をより良い状態に維持することが可能であると考える. |
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ISSN: | 1882-6881 |