血管原性下肢切断例の検討

【目的】1991年から5年間の当院における血管原性下肢切断例の臨床像, 予後を検討し, その問題点を述べた. 【対象】10例12肢, 男性5例7肢, 女性5例5肢. 年齢は54~82歳(平均70.5歳). 原疾患は閉塞性動脈硬化症7例8肢, 糖尿病性3例4肢であった. 術前の合併症は糖尿病5例, 人工透析3例, 高血圧性心臓病2例, 痴呆2例, 仙骨部褥瘡2例等であった. 切断レベルはリスフラン1, ショパール1, サイム1, 下腿切断6, 大腿切断3であった. 【結果】創の一次治癒はリスフラン1肢, 大腿切断2肢, サイムの1肢のみであり, 創の遷延治癒は4肢にみられた. また再切断は下腿切...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published inリハビリテーション医学 Vol. 33; no. 11; p. 868
Main Authors 市川徳和, 玉田利徳, 黒住健人
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本リハビリテーション医学会 18.11.1996
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:【目的】1991年から5年間の当院における血管原性下肢切断例の臨床像, 予後を検討し, その問題点を述べた. 【対象】10例12肢, 男性5例7肢, 女性5例5肢. 年齢は54~82歳(平均70.5歳). 原疾患は閉塞性動脈硬化症7例8肢, 糖尿病性3例4肢であった. 術前の合併症は糖尿病5例, 人工透析3例, 高血圧性心臓病2例, 痴呆2例, 仙骨部褥瘡2例等であった. 切断レベルはリスフラン1, ショパール1, サイム1, 下腿切断6, 大腿切断3であった. 【結果】創の一次治癒はリスフラン1肢, 大腿切断2肢, サイムの1肢のみであり, 創の遷延治癒は4肢にみられた. また再切断は下腿切断の2肢が大腿切断を, 大腿切断の1肢が股離断であった. 術後の移動能力をみると, 義足歩行はわずか2例で, ショパール, サイムの遠位での切断レベルに限られていた. 車椅子4例, 寝たきり4例であった. 転帰として自宅生活は3例, 施設・病院は6例であった. 1例は死亡した. 【考察】血管原性下肢切断者は高齢者に多く, 術前合併症も多く, 術前・術後管理に苦慮することが多かった. 断端部の創の治癒が難治性であり, 特に下腿切断では問題が多かった. 救命のためだけの切断もあり, 義足歩行になる例も少なく, 高齢者の血管原性下肢切断者の術後リハビリテーションの困難さを痛感した.
ISSN:0034-351X