食道癌手術周術期代謝栄養管理は手術部位感染 (surgical site infection) 対策として貢献するか?

わが国の食道外科は食道癌に対する食道切除再建術が中心で, 縫合不全や肺炎などの感染性合併症が術後短期・長期の予後不良因子であることが報告されている. 近年は鏡視下/ロボット支援下の低侵襲食道癌手術が普及し, 縫合不全が関与しない切開創手術部位感染(surgical site infection: SSI)や肺炎の減少に貢献している. しかし, 縫合不全発症率はいまだ高く, 縫合不全による臓器/体腔SSIの発症ならびに重症化の予防が術式にかかわらず最も重要なSSI対策であり, 癌の予後向上のために求められる. 一方, 縫合不全をはじめSSIの発症には, 手術など治療関連因子に加えて高齢・低栄養・...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in外科と代謝・栄養 Vol. 56; no. 5; pp. 165 - 171
Main Authors 鍋谷圭宏, 高橋直樹, 前田恵理, 金塚浩子, 實方由美, 桑山直樹, 黒崎剛史, 水藤広, 加野将之, 首藤潔彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本外科代謝栄養学会 15.10.2022
Online AccessGet full text
ISSN0389-5564

Cover

More Information
Summary:わが国の食道外科は食道癌に対する食道切除再建術が中心で, 縫合不全や肺炎などの感染性合併症が術後短期・長期の予後不良因子であることが報告されている. 近年は鏡視下/ロボット支援下の低侵襲食道癌手術が普及し, 縫合不全が関与しない切開創手術部位感染(surgical site infection: SSI)や肺炎の減少に貢献している. しかし, 縫合不全発症率はいまだ高く, 縫合不全による臓器/体腔SSIの発症ならびに重症化の予防が術式にかかわらず最も重要なSSI対策であり, 癌の予後向上のために求められる. 一方, 縫合不全をはじめSSIの発症には, 手術など治療関連因子に加えて高齢・低栄養・サルコペニア・糖尿病などの患者因子が大きく関与すると思われる. これらのうちSSIのリスクになることが明らかになった因子もあるが, それを改善する適切な代謝栄養学的介入の効果を示すエビデンスはまだ少ない. 食道癌術後SSI対策として, 術前からの腸を使う積極的栄養管理・リハビリテーション・口腔管理などを含むチーム医療での周術期代謝栄養管理のエビデンスが一つずつ積み重ねられ, 予後向上に貢献することを期待したい.
ISSN:0389-5564