地方中核都市周辺部に存在する厚生連病院の医療ソーシャルワーカー業務の変遷について~20年間の相談記録の分析を通して
<はじめに>長野松代総合病院(以下, 当院)は長野市(人口約38万人, 高齢化率21.0%)の東南部(高齢化率24.6%)に位置し, 亜急性期病室30床を含めた合計365床を有する病院である(2005年3月現在). 当院に医療ソーシャルワーカー(以下, MSW)が配置されてから20年が経過した. この間数回にわたる医療法改正などが行なわれ, 医療を提供する体制の変化から医療相談業務にも変化が見られたのではないかと考えた. 今回, 今後の業務の方向性を明確にするために, MSW導入期と現在における相談件数及び業務内容を比較し, その内容の変遷について検討した. <方法>M...
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Published in | 日本農村医学会雑誌 Vol. 54; no. 3; p. 359 |
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Main Authors | , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本農村医学会
01.09.2005
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ISSN | 0468-2513 |
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Summary: | <はじめに>長野松代総合病院(以下, 当院)は長野市(人口約38万人, 高齢化率21.0%)の東南部(高齢化率24.6%)に位置し, 亜急性期病室30床を含めた合計365床を有する病院である(2005年3月現在). 当院に医療ソーシャルワーカー(以下, MSW)が配置されてから20年が経過した. この間数回にわたる医療法改正などが行なわれ, 医療を提供する体制の変化から医療相談業務にも変化が見られたのではないかと考えた. 今回, 今後の業務の方向性を明確にするために, MSW導入期と現在における相談件数及び業務内容を比較し, その内容の変遷について検討した. <方法>MSWが導入された1983年度から1987年度までの医療相談記録を「導入期データ」, 2001年度から2003年度までの医療相談記録を「近年データ」とし, それぞれを厚生労働省の「医療ソーシャルワーカーの業務指針」に沿って分類し, 業務内容別件数を集計し, 比較した. また, 導入期と近年の業務内容の違いを見るため, 導入期と近年の業務の割合の平均値を比較した. <結果>年間相談件数の平均は, 導入期では628.8±184.6(SD)件, 近年では2187.7±291.6件であった. 業務内容の各年度に占める割合の平均値で最も多かったのは, 導入期では「療養中の心理的・社会的問題の解決, 調整援助」で46.7±3.3(SD)%, 続いて「受診・受療援助」21.9±6.4%であった, 近年では「療養中の心理的・社会的問題の解決, 調整援助」が41.8±2.4(SD)%, ついで「退院援助」が33.8±3.9%であった. <考察>相談件数は導入期と比べ, 近年は約3.5倍に増加していた. この要因として患者数の増加(外来患者2.5倍, 入院患者1.3倍), 診療科の増設(1994年脳神経外科, 1996年心療内科), MSWの増員(1996年に1名, 2000年度に1名)が考えられた. 業務内容では, 導入期, 近年ともに「療養中の心理的・社会的問題の解決, 調整援助」が最も多くMSWの普遍的な業務と考えられた. 導入期と近年の比較では「受診・受療援助」の割合の減少と「退院援助」の割合の増加という大きな変化が見られた. 「受診・受療援助」の割合の減少の要因として, 健康志向を社会全体で支援する体制が整備され, 疾病・治療に対する患者の意識が変わり, 健康への関心が高まったことが考えられる. 「退院援助」が増加した要因として, 医療法の改正により, 病院の機能分化, 在宅医療・在宅介護への移行が進められたことが挙げられる. 多様な社会資源が存在する中, 個々の患者をとりまく状況に応じた情報を提供し, 患者自身が選択できるような援助が求められていると考えられた. 今回の調査において, MSWの基本となる業務が明らかになった一方, 医療制度改革など, 行政や社会情勢の影響を受けて変化したと考えられる業務も見られた. このことからMSWは自身の基本的な業務を遂行するとともに, 常に制度・政策の流れを見通す努力が必要であると考える. |
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ISSN: | 0468-2513 |