両心室補助人工心臓装着後にヘパリン起因性血小板減少症を疑った症例とその診断方法について

「要旨」ヘパリン起因性血小板減少症(heparin induced thrombocytopenia:HIT)の診断方法には4Tsスコアリングによる臨床的診断, 免疫学的測定や機能的測定による抗体検査があり, これらをもとにHITの確定診断を行うのが本邦におけるゴールドスタンダードである. 薬剤性心筋症による重症心不全患者に対して両心室補助人工心臓装着術後に, 臨床的診断からHITを疑い, ラテックス凝集法による免疫学的測定を行ったところHIT抗体が陽性であったため, 機能的測定の実施機関に対して検査を依頼した際に現在対応していないことが分かった. その後に行った化学発光免疫測定法(chemi...

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Published in体外循環技術 Vol. 48; no. 1; pp. 25 - 30
Main Authors 藤城和樹, 柏公一, 寺田類, 黒澤秀郎, 高橋舞, 朝倉陽香, 藤谷早織, 飛田瑞穂, 谷田勝志, 久保仁, 嶋田正吾, 土井研人, 小野稔
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本体外循環技術医学会 01.03.2021
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ISSN0912-2664

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Summary:「要旨」ヘパリン起因性血小板減少症(heparin induced thrombocytopenia:HIT)の診断方法には4Tsスコアリングによる臨床的診断, 免疫学的測定や機能的測定による抗体検査があり, これらをもとにHITの確定診断を行うのが本邦におけるゴールドスタンダードである. 薬剤性心筋症による重症心不全患者に対して両心室補助人工心臓装着術後に, 臨床的診断からHITを疑い, ラテックス凝集法による免疫学的測定を行ったところHIT抗体が陽性であったため, 機能的測定の実施機関に対して検査を依頼した際に現在対応していないことが分かった. その後に行った化学発光免疫測定法(chemiluminescent immunoassay:CLIA)によるIgG-HIT抗体測定の結果は陰性であった. 各種免疫学的測定法ではCLIAによるIgG-HIT抗体測定の特異度が最も高いという報告があることから, 本患者はヘパリンの使用禁止が解除された. しかし, HIT抗体が陽性であったことから, 念のためヘパリンの使用を控える方針となった. 本症例へ対応する中で現在, 本邦においては機能的測定が不可能な状況にあることが判明した. このような現状において, 過剰診断や過小診断を防ぐためにはIgG-HIT抗体, HIT抗体, 4Tsスコアリングの結果を十分に検討し診断することが重要である.
ISSN:0912-2664