(II-6-6)軟口蓋麻痺を呈した抗糖脂質抗体陽性の自己免疫性ニューロパチーの2例

【はじめに】抗糖脂質抗体は自己免疫性ニューロパチーの補助診断や経過の指標に広く用いられている. 今回われわれは軟口蓋麻痺を呈した自己免疫性ニューロパチーの2例を経験したので報告する. 【症例および経過】症例1:19歳, 男性. 急性腸炎の2週間後に複視, 運動失調, 開鼻声, 飲料が鼻にまわる症状が出現した. 神経学的所見として外眼筋麻痺, 軟口蓋麻痺, 深部腱反射の消失, 運動失調を認めた. 髄液検査, 頭部MRI, 神経伝導検査は正常であった. 内視鏡検査で喉頭麻痺は認めなかった. 経過と症状からFisher症候群と診断し, 大量ガンマグロブリン療法で症状はすみやかに改善した. 血清抗GQ...

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Published in日本摂食・嚥下リハビリテーション学会雑誌 Vol. 10; no. 3; pp. 417 - 418
Main Authors 谷口洋, 関根威, 小野内健司, 森田昌代, 松井和隆, 岡尚省, 井上聖啓
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本摂食・嚥下リハビリテーション学会 31.12.2006
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ISSN1343-8441

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Summary:【はじめに】抗糖脂質抗体は自己免疫性ニューロパチーの補助診断や経過の指標に広く用いられている. 今回われわれは軟口蓋麻痺を呈した自己免疫性ニューロパチーの2例を経験したので報告する. 【症例および経過】症例1:19歳, 男性. 急性腸炎の2週間後に複視, 運動失調, 開鼻声, 飲料が鼻にまわる症状が出現した. 神経学的所見として外眼筋麻痺, 軟口蓋麻痺, 深部腱反射の消失, 運動失調を認めた. 髄液検査, 頭部MRI, 神経伝導検査は正常であった. 内視鏡検査で喉頭麻痺は認めなかった. 経過と症状からFisher症候群と診断し, 大量ガンマグロブリン療法で症状はすみやかに改善した. 血清抗GQ1b, GT1a, GA1抗体が陽性であった. 症例2:46歳, 男性. 上気道感染の5日後に開鼻声と飲料が鼻にまわる症状が出現した. 神経学的所見は軟口蓋麻痺を認めるのみであった. 髄液検査, 頭部MRI, 神経伝導検査は正常であった. 内視鏡検査で喉頭麻痺は認めなかった. 原因不明の脳神経麻痺としてステロイドパルス療法を施行し症状はすみやかに改善した. 血清で抗GQ1b, GT1a, GT1b, GD1a, GD3抗体が陽性であった. 【考察】自己免疫性ニューロパチーは検出される抗糖脂質抗体と臨床症状に関連を認めることが多く, なかでも抗GT1a抗体は口咽頭麻痺に関連があるとされている. Fisher症候群は外眼筋麻痺, 深部腱反射低下, 運動失調が特徴で抗GQ1b抗体陽性なことが多いが, 症例1のように抗GT1a抗体も陽性で軟口蓋麻痺を合併する症例があり注意が必要である. 症例2は軟口蓋麻痺のみで他の症状を欠き非典型的だが, 抗糖脂質抗体陽性から自己免疫性ニューロパチーと考えられた. 自己免疫性ニューロパチーによる軟口蓋麻痺は予後良好なことが多いが, 適切な診断や治療のために抗糖脂質抗体の測定が必要と思われた.
ISSN:1343-8441