悪玉腸内細菌に対する臓器ネットワークを介した制御機構

「要約:」腸管は外界と粘液層を介して接しており, 常に外界の異物にさらされている. そのため, 腸管管腔には種々の生体防御因子が分泌され, 粘膜の保護に働いている. 膵臓から分泌されるGlycoprotein2(GP2)は生体防御因子の1つであり, 腸管粘膜組織を守る第一線のバリアとしての役割を担っている. 膵臓GP2はクローン病において, 膵自己抗体や付着性侵入性大腸菌との関連が報告されている. 我々は, GP2が大腸菌に発現するFimHに結合することで腸管粘膜組織への浸潤を阻害すること, GP2結合細菌が全身に侵入することにより抗GP2中和抗体が誘導されることなどを報告してきた. つまり,...

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Published in東邦医学会雑誌 Vol. 71; no. 1; pp. 36 - 38
Main Authors 緒方仁志, 倉島洋介, -
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 東邦大学医学会 01.03.2024
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ISSN0040-8670

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Summary:「要約:」腸管は外界と粘液層を介して接しており, 常に外界の異物にさらされている. そのため, 腸管管腔には種々の生体防御因子が分泌され, 粘膜の保護に働いている. 膵臓から分泌されるGlycoprotein2(GP2)は生体防御因子の1つであり, 腸管粘膜組織を守る第一線のバリアとしての役割を担っている. 膵臓GP2はクローン病において, 膵自己抗体や付着性侵入性大腸菌との関連が報告されている. 我々は, GP2が大腸菌に発現するFimHに結合することで腸管粘膜組織への浸潤を阻害すること, GP2結合細菌が全身に侵入することにより抗GP2中和抗体が誘導されることなどを報告してきた. つまり, 膵臓GP2を腸炎を制御するための新規治療分子として活用できる可能性が示された. 加えて, 膵臓GP2分泌を起点とし, 膵臓と腸が連携するメカニズムの更なる解析と活用法の開発は, バクテリアルトランスロケーションによって悪化する多くの疾患に対する予防法や治療法への応用につながると期待される.
ISSN:0040-8670