ヒト下顎における悪性腫瘍細胞の増殖蔓延に関する病理組織学的研究

「緒言」ヒト顎骨骨髄における悪性腫瘍細胞の増殖蔓延状況についての報告は今日まで非常に多く, 実に枚挙にいとまがない, その大多数のものは臨床的症例報告かまたは摘出材料のごぐ一部についての検索であって, その内容は決して十分とは言い難い. 一方病理学的に顎骨の広範囲にわたる系統的組織学的研究は意外にも少なく, 僅かに教室の橋本, 山崎らによってなされているにすぎない. 著者は日頃下顎を1つの臓器と考える立場より, 下顎は歯の支持組織であるのみでなく, 造血組織をも含んでおり, 組織構築の上からもまた病変の進展からも両者には密接な関係がある. かかる視点より, 下顎骨骨髄, 歯槽部骨髄, 歯周組織...

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Published in神奈川歯学 Vol. 23; no. 3; pp. 293 - 319
Main Authors 吉田節夫, 橋本紀三, 久田太郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 神奈川歯科大学学会 30.12.1988
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ISSN0454-8302

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Summary:「緒言」ヒト顎骨骨髄における悪性腫瘍細胞の増殖蔓延状況についての報告は今日まで非常に多く, 実に枚挙にいとまがない, その大多数のものは臨床的症例報告かまたは摘出材料のごぐ一部についての検索であって, その内容は決して十分とは言い難い. 一方病理学的に顎骨の広範囲にわたる系統的組織学的研究は意外にも少なく, 僅かに教室の橋本, 山崎らによってなされているにすぎない. 著者は日頃下顎を1つの臓器と考える立場より, 下顎は歯の支持組織であるのみでなく, 造血組織をも含んでおり, 組織構築の上からもまた病変の進展からも両者には密接な関係がある. かかる視点より, 下顎骨骨髄, 歯槽部骨髄, 歯周組織および歯髄における悪性腫瘍細胞が, どの様に浸潤増殖し, その増殖様式にどの様な特長を有するものかを知ること, さらに腫瘍を骨髄の原発性と続発性に分けてみた場合, 如何なる差異がみられるかを検討した. そしてこれらの悪性腫瘍細胞の増殖が歯牙, 歯周組織および骨組織へ如何なる影響を与えるか, また治療の影響などについて解明することを目的とした.
ISSN:0454-8302