全身麻酔下での小児歯科治療の実態

「抄録」小児歯科の対象は臨床的手段で分けられている他科と異なり, 一般的に年齢, すなわち永久歯列完成までとされている. その中には, 身体的あるいは精神的障害を有する心身障害児も少なくない. 我々歯科医は口腔疾患を治療し, 機能や形態を回復させることにより社会活動に参加しているのであるから, 心身障害児に対しても歯科疾患の治療や予防を行なう義務がある. しかし, 障害児は術者との意志の疎通が困難なことが多く, 通常の方法では満足のいく治療が得られない場合が多い. 近年, 全身麻酔法の技術が進み, 歯科の分野にも多く応用されるようになり, 小児歯科の分野においても非協力児や心身障害児を全身麻酔...

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Published in神奈川歯学 Vol. 10; no. 2; pp. 115 - 123
Main Authors 塚本末広, 高森俊治, 弥富尚文, 矢嶌ゆみ, 西田賢三, 内村登, 檜垣旺夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 神奈川歯科大学学会 30.09.1975
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ISSN0454-8302

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Summary:「抄録」小児歯科の対象は臨床的手段で分けられている他科と異なり, 一般的に年齢, すなわち永久歯列完成までとされている. その中には, 身体的あるいは精神的障害を有する心身障害児も少なくない. 我々歯科医は口腔疾患を治療し, 機能や形態を回復させることにより社会活動に参加しているのであるから, 心身障害児に対しても歯科疾患の治療や予防を行なう義務がある. しかし, 障害児は術者との意志の疎通が困難なことが多く, 通常の方法では満足のいく治療が得られない場合が多い. 近年, 全身麻酔法の技術が進み, 歯科の分野にも多く応用されるようになり, 小児歯科の分野においても非協力児や心身障害児を全身麻酔下で集中的に治療するようになってきた. 本学小児歯科学教室では, これらの心身障害児で全身麻酔を必要とする小児を対象に, 麻酔学教室の協力を得て歯科治療を行なっているが, 昭和48年9月より49年10月までの約1ヵ年間に治療した20例について検索した. 全身麻酔下での集中治療は, 心身障害児で一般外来患者として通院による治療ができない場合のみ適応とした. また, 術者と患児との理解が治療を可能にする場合は, 通院による一般外来患者と同じように治療し, 場合によっては笑気吸入鎮静法を補助的に使用した. 全身麻酔下による治療の場合は, 患者の管理の必要上, 術前, 術後を含め3日間入院させた. 麻酔は経口的気管内挿管の下で, 循環式半閉鎖法で行い, 麻酔剤はG.O.Fを使用した. 治療に際しては, 術前に緻密な診断, 治療方法, 治療計画を必要とし, また器材に対しても万全の準備が必要であり, 抜歯が多かったことは心身障害児に関係する社会およびその家族に対して, 早期予防と早期治療以外に手段のないことを教育指導しなければならないことを示唆した. 今後, これらの患児が集中治療を行なう必要がないように, 術後の定期的診査によって管理し, 家族に対しても口腔衛生や食生活の教育指導を実施することが必要である.
ISSN:0454-8302