血小板の産生とトロンボポエチン

各種の血球は, もともとは多能性造血幹細胞に由来する. 幹細胞から派生した各血球系前駆細胞は様々な因子の作用を受け, さらに増殖と分化の段階へ進む. 全骨髄細胞に数百分の1以下の割合で存在する巨核球前駆細胞は, トロンボポエチン(Thrombopoietin;TPO)の作用により増殖と分化の過程へ進み, 核が多倍体化した成熟巨核球となる. そして, 一個の成熟巨核球から数千の血小板が産生される. このように, TPOは巨核球造血・血小板産生の場で主要な役割を担う. また, TPOは巨核球造血だけではなく, 幼若な造血前駆細胞にも作用して多系統の血球の増殖と分化に関与することも判明してきた. T...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 45; no. 4; pp. 576 - 577
Main Author 加藤尚志
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.08.1999
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ISSN0546-1448

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Summary:各種の血球は, もともとは多能性造血幹細胞に由来する. 幹細胞から派生した各血球系前駆細胞は様々な因子の作用を受け, さらに増殖と分化の段階へ進む. 全骨髄細胞に数百分の1以下の割合で存在する巨核球前駆細胞は, トロンボポエチン(Thrombopoietin;TPO)の作用により増殖と分化の過程へ進み, 核が多倍体化した成熟巨核球となる. そして, 一個の成熟巨核球から数千の血小板が産生される. このように, TPOは巨核球造血・血小板産生の場で主要な役割を担う. また, TPOは巨核球造血だけではなく, 幼若な造血前駆細胞にも作用して多系統の血球の増殖と分化に関与することも判明してきた. TPOは主として肝実質細胞で産生されるが, 個々の産生細胞における発現量は極めて少なくかつ構成的である. 血小板減少時にはTPOmRNAの発現が骨髄で上昇するとの報告もあるが, TPO産生を直接的に刺激ないしは抑制するような制御の有無については未解明のままである. しかし実際には, 血小板減少症では血小板減少に対応した血中TPO濃度の上昇が伴い, 血小板数が正常に戻ると血中TPO濃度も正常となる. これは, 血小板や巨核球のc-MplとTPOが結合する結果, 血液循環中の遊離TPO量が規定されるためであると説明されている.
ISSN:0546-1448