臨床研究入門-EBMの実践とエビデンスの作り方

臨床研究はわが国では遅れが顕著である. この講演が小児腎疾患の診療におけるEBMの実践と臨床研究の推進に役立てば幸いである. 演者は1990年より小児ネフローゼ症候群, IgA腎症の治療法を確立するために臨床研究をおこなってきた. しかし, 小児臨床試験の研究費は極めて乏しく, 劣悪な環境におかれてきた. 平成14年, 厚生労働科学研究補助金による臨床研究事業が開始され, 小児科領域においてもエビデンス収集のための質の高い大規模臨床研究を行うことが可能になった. 平成15年度から「小児難治性腎疾患に対する薬物療法ガイドライン作成のための多施設共同研究と臨床試験体制整備(H15-小児-002)」...

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Published in日本小児腎臓病学会雑誌 Vol. 24; no. 1; p. 124
Main Author 吉川徳茂
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本小児腎臓病学会 15.04.2011
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ISSN0915-2245

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Summary:臨床研究はわが国では遅れが顕著である. この講演が小児腎疾患の診療におけるEBMの実践と臨床研究の推進に役立てば幸いである. 演者は1990年より小児ネフローゼ症候群, IgA腎症の治療法を確立するために臨床研究をおこなってきた. しかし, 小児臨床試験の研究費は極めて乏しく, 劣悪な環境におかれてきた. 平成14年, 厚生労働科学研究補助金による臨床研究事業が開始され, 小児科領域においてもエビデンス収集のための質の高い大規模臨床研究を行うことが可能になった. 平成15年度から「小児難治性腎疾患に対する薬物療法ガイドライン作成のための多施設共同研究と臨床試験体制整備(H15-小児-002)」の研究を主任研究者として, IgA腎症, ステロイド抵抗性小児ネフローゼ症候群, 頻回再発型ネフローゼ症候群の3疾患を対象とした多施設共同非盲検ランダム化比較試験を実施している. データマネジメントを行い, 登録患者の適格性や有害事象の発生に関するモニタリングも行って, モニタリングレポートを発行している. この研究を通して, 小児腎臓病領域における質の高いエビデンス収集のための全国的な臨床研究ネットワークを構築し, 日本小児腎臓病学会会員の臨床試験に対する意識を高めてきた. また, 小児腎臓病領域の臨床研究指導者を養成するために, 演者の医局所属の小児科医師3名を, 中村秀文分担研究者(国立成育医療研究センター)のもとに派遣し, 東京大学・大橋靖雄教授の協力のもとに, 臨床試験教育とon the job trainingをおこなっている. 平成19年からは医療技術実用化総合研究事業:臨床研究・予防・治療技術開発研究がはじまり, 「小児ネフローゼ症候群に対する初期治療確立を目指した多施設共同臨床研究と拡大臨床試験体制整備(H19-臨床試験-一般-007)」の研究をはじめた. 一般小児科医に対するEBMおよび治療開発についての啓発と教育を実施しつつ, 一般小児科医も参画した臨床試験ネットワークを構築し, 臨床試験を実施している. 実際に臨床試験に参加することによりEBMを実践し, 臨床研究を推進することが可能になると考える.
ISSN:0915-2245