ワルファリン継続内服下で発生した左房内巨大血栓が誘因と考えられた播種性血管内凝固症候群に対して, ワルファリンからアピキサバンへの変更が有効であった1例

《Abstract》症例は86歳女性. 83歳時に少なくとも10年以上持続した心房細動, うっ血性心不全のために当院へ紹介となり, 巨大左房, 重度の僧帽弁閉鎖不全症および中等度の三尖弁閉鎖不全症に対して生体弁を用いた僧帽弁置換術と三尖弁形成術, 左心耳閉鎖術, 左房縫縮術が実施された. 術後は病状が安定し, 紹介医にてワルファリンによる抗凝固療法が継続されていたが, 術後3年が経過した86歳時に全身倦怠感, 呼吸困難, 下腿浮腫の増悪, 体動困難などを主訴に当院へ救急搬送された. 搬送時に実施した心臓超音波検査では左房内にもやもやエコーを認めるとともに, 巨大な血栓を認めた. さらに搬送時の...

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Published in心臓 Vol. 56; no. 10; pp. 1000 - 1009
Main Authors 賀来文治, 宮有佑, 東雅也, 勝田省嗣, 川島隼人
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本心臓財団・日本循環器学会 15.10.2024
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ISSN0586-4488

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Summary:《Abstract》症例は86歳女性. 83歳時に少なくとも10年以上持続した心房細動, うっ血性心不全のために当院へ紹介となり, 巨大左房, 重度の僧帽弁閉鎖不全症および中等度の三尖弁閉鎖不全症に対して生体弁を用いた僧帽弁置換術と三尖弁形成術, 左心耳閉鎖術, 左房縫縮術が実施された. 術後は病状が安定し, 紹介医にてワルファリンによる抗凝固療法が継続されていたが, 術後3年が経過した86歳時に全身倦怠感, 呼吸困難, 下腿浮腫の増悪, 体動困難などを主訴に当院へ救急搬送された. 搬送時に実施した心臓超音波検査では左房内にもやもやエコーを認めるとともに, 巨大な血栓を認めた. さらに搬送時の血液検査にて血小板数の低下と, フィブリノーゲンの高度な低下, FDP, D-dimerの上昇を認め播種性血管内凝固症候群(DIC)の合併を認めた. 左房内の巨大血栓以外にDICの誘因となる他の病態は存在せず, 巨大血栓がDICの原因と考えられた. 抗凝固薬をワルファリンからアピキサバンへ変更することにより, 長期的にDICのコントロールが可能となり, さらに巨大血栓の著明な消退も認められた. 左房内巨大血栓がDICの原因になり得ることや, 循環器疾患にDICを合併した際における抗凝固薬の選択において示唆に富む症例と考えられたため報告させていただいた.
ISSN:0586-4488